大塚HD・樋口CEO 第3次中計「独自のトータルヘルスケア企業として世界に躍進」
公開日時 2019/05/31 03:52
大塚ホールディングスの樋口達夫代表取締役社長兼CEOは5月30日、第3次中期経営計画を発表し、2019~23年度を“成長の5年間”に位置付け、「独自のトータルヘルスケア企業として世界に躍進する」と語った。極小センサーをエビリファイに組み込んだ、世界初のデジタルメディスンを上市させた同社。健康への意識が高まるなかで、健康の維持・増進、疾病の診断から治療まで担う“トータルヘルスケア企業”として、新たな価値創造に挑戦する姿勢を鮮明にした。業績目標として、年間10%以上の成長を掲げ、最終年度の23年度には売上収益1兆7000億円、事業利益2000億円の達成を目指す。
「個人でより積極的に健康管理ができる時代になりつつある。ぶれることのない理念に基づいた価値創造を継続する。多様化したニーズに対応し、サイエンス、テクノロジーを駆使して、新しいコンセプトを立案し、新たな価値創造につなげ、健康増進に貢献していきたい」―。樋口CEOは、AI(人工知能)やIoT、ビッグデータ、ロボティクスなどが引き起こす第四次産業革命のなかで、目指す新たなコンセプトについてこう語った。
◎米国ではデジタルメディスンにも注力「大塚だからできる新領域での挑戦」
ICT化の波が押し寄せるなかで、“不調のサイン”も、デジタルで見出だすことができるような時代が来ると見通す。健康への関心が高まり、セルフメディケーションの重要性も高まるなかで、医療関連事業とニュートラシューティカルズ(NC)関連事業を柱とした幅広い事業展開を武器に、強みを発揮したい考えだ。
ビッグデータの重要性も高まるなかで、重視するのが、その質だ。「情報の質が良くないと先に進めない。まず、データに関してクオリティーの高いものをベースに、現実に何が起きているかということを基にビジネスモデル化できればいい」と話す。具体的な医療関連事業の取り組みとしては、エビリファイに極小センサーが組み込まれ、アドヒアランスを管理できる“デジタルメディスン”「エビリファイマイサイト」をあげた。米国では4月から、一部の民間保険でカバーできるようになったことも紹介。「今年一年、そのトライアルに取り組む」と意気込んだ。
こうした取り組みを、「従来とは異なるビジネスモデルで大塚できる新たな価値創造に挑戦している」と樋口CEOは自信をみせる。目指すのは、“大塚だからできる”新領域での挑戦。そして、その先に健康寿命の延伸に貢献、「世界の人々の健康に貢献する、なくてはならない企業」の姿を描く。
◎薬剤標的タンパク質「TAS-116」や治療性高血圧への腎デナベーションに期待
未治療な治療へのニーズに対応するための挑戦も続ける。薬剤標的タンパク質としてファーストインクラスを目指す「TAS-116」は、GIST(消化管間質腫瘍)の適応取得を目指し、フェーズ3段階にある。樋口社長は、「まずは少数の患者に貢献する事業計画だが、ファーストインクラスのインパクトは大きく、飛躍を遂げる可能性はあると大きな期待を寄せている」と話した。このほか、治療性高血圧への腎デナベーションなどにも取り組むなど、新規創薬技術やデバイスを活用し、ファーストインクラスの革新的製品創出を目指す。
革新的ソリューション創出に向けて、研究開発費は18年度の1929億円から23年度には2600億円まで高める。
◎既存事業最大化 グローバル4製品の伸長見込む 北米やアジア市場の成長も
既存事業価値の最大化も目指す。主力製品に位置づけたグローバル4製品(エビリファイメンテナ、レキサルティ、サムスカ/ジンアーク、ロンサーフ)などを成長ドライバーに位置付け、戦略的取り組みを強化する。売上高も23年度までに2000億円伸ばす計画だ。さらに新薬の成長で900億円上積みし、医療関連事業だけで2900億円伸ばして5700億円の売上を達成したい考えだ。「残念ながら日本は、多くの製薬企業は難しい状況」との見方を示し、国内市場はマイナス成長を見込む。一方で、北米やアジア市場は、「大きな飛躍を見込んでいる」と期待感を示した。このほか、資本コストを意識した経営の必要性も強調した。