厚労省 オンライン診療指針の見直しに着手 医薬品の再処方も
公開日時 2019/01/24 03:52
厚生労働省は1月23日、オンライン診療指針の見直しに着手した。2018年4月実施の診療報酬改定ではオンライン診療料を新設した。今回議論となっている「オンライン診療の適切な実施に関する指針(以下、指針)」は、診療報酬上の施設要件になっているものだ。一方で、技術革新は急速に進んでおり、関係学会や事業者から様々な改善要望もあがっている。同省としては、運用上の課題や安全性・有効性のエビデンスを拾い上げ、指針の内容を明確化することで、適切なオンライン診療を促したい考え。初診時の対面診療の除外規定のほか、「過去処方した医薬品の再処方」も見直しの項目にあげられている。同省は5月まで議論を続け、指針とQ&Aを改訂する方針。
オンライン診療をめぐっては規制改革推進会議が18年6月に閣議決定した「規制改革実施計画」に明記。「技術の発展やエビデンスの集積状況に応じて、ガイドラインを少なくとも一年に一回以上更新する」ことを18年度中に検討・結論、措置することが求められていた。
一方で18年4月に診療報酬で明確に位置付けられて以降、ED治療などの自由診療で「初診から対面」との原則を守らなかったり、医師資格を持たない相談員による診察が行われる、糖尿病治療薬をやせ薬として活用するなど、不適切な事例もあがってきている。18年12月には医政局医事課長名で通知を発出し、初診時の対面診療の原則を踏まえない例や、チャット機能のみを情報通信手段とした診療行為は、医師法第20条に違反する恐れがあることを周知している。実際、指導対象も10例以上あるという。
◎指針を一部明確化
そのため、「医療の質向上、アクセシビリティの確保、治療効果の最大化」を実現できるよう、指針を一部明確化する考え。特に安全性や有効性に配慮し、オンライン診療を実施する医師が遵守すべきルールの理解を深め、実践する仕組みの構築を目指す。オンライン診療の広告やウエブ上でのセキュリティリスクなどについても言及した。
介護冒頭で、厚労省医政局の吉田学局長は、診療報酬点数の新設や指針の策定で「オンライン診療の制度的な一定の枠組みができたと受け止めている」と表明。そのうえで、技術的な進歩を踏まえ、「指針の中で不明確だから明確にできないだろうかという点、指針自体もより良いものにしていけないだろうかという点もあろうかと思っている」と述べた。
◎セカンドオピニオンや緊急避妊薬の処方も検討課題に
具体的には、対面診療や同一医師による原則についての例外規定、状態が落ち着いている患者で予測された症状の変化がある場合の対応、看護師がオンライン診療を補助する際の明示などを検討する。このなかには、「過去処方した医薬品の再処方」も含まれる。腰痛への貼付薬の処方など、軽微で予想することのできるような疾患を具体的に例示し、オンライン診療で可能な処方などを検討する。対面診療の原則の例外規定としては、セカンドオピニオンや、緊急避妊薬の処方などを検討課題にあがる見通し。
黒木春郎委員(医療法人社団嗣業の会・理事長)は、日本オンライン診療研究会の要望として、慢性疾患をフォローする場合に感冒症状や軽微な症状への処方が求められることがよくあると説明。「患者の利便性を考え、対応できるようにしてほしい」と要望した。
◎「オンライン受診診療」と「遠隔健康医療相談」の定義見直し
この日の検討会では、「オンライン受診勧奨」、「遠隔健康医療相談」の定義見直しが議題にあがった。これまで夜間・休日の医療機関への電話相談などで、「受診不要の指示・助言」や、「患者個人の状態に対する罹患可能性のある疾患名の列挙」を行っても大きな問題が報告されていないことなどから、オンライン受診勧奨でもこれは可能とした。また、「一般用医薬品の使用」については薬局などで医師以外が応答マニュアルに沿った相談などを行っていることを踏まえ、「オンライン受診勧奨」、「遠隔健康医療相談(医師)」でも可能であることを明確にする考え。ただし、医師の判断が伴うと医行為となるため、助言と判断の線引きなどがこの日の検討会では指摘された。