東京医薬品工業協会などによる恒例の薬業四団体新年賀詞交歓会が1月8日、業界ほか行政の関係者など800人以上の参加を得て、東京都内のザ・プリンスパークタワーで開催された。主催者代表あいさつに立った東薬工の樋口達夫会長(大塚ホールディングス社長兼CEO)は、薬価制度抜本改革に対し「薬剤費の削減に重点がおかれ、イノベーションの推進は軽視された」と指摘し、次期通常改定に向け、新薬創出等加算品目や企業要件の見直しとともに「医薬品の多面的価値ならびにイノベーションの適切な評価に一層ご留意いただきたく政府関係者にはお願いしたい」と対応を迫った。同会長は、画期的新薬の創出により「国民の生命・健康の向上に貢献する根幹的産業でありたい」と訴えた。
樋口会長は、医療・医薬品産業を国民皆保険の維持と日本経済の持続的成長を支える産業と位置付け、「『イノベーションの推進』の両立が必要不可欠なテーマである」と強調。研究開発税制での総額型上乗せ措置の延長、オープンイノベーション型の拡充に感謝を述べつつも、薬価制度抜本改革に対しては「薬価改定に依存した財源確保は納得できるものではない」と強い不満を表明、次期通常改定に向け政府対応の見直しを求めた。
加えて、「条件付き早期承認制度」「先駆け審査指定制度」の導入やPMDAの審査体制強化による承認の早期化に期待を寄せた。「MID-NET」などを活用した安全対策、AI活用による新薬開発の効率化も不可欠だとして、その実現に向けた取り組みにAMEDを含め協力を求めた。
樋口会長は、「資源大国ではない日本において、知識集約型産業である医薬品産業はその真価を発揮すべき時」と指摘。「真の医薬品の価値を具現化すべく画期的新薬を創出することで国民の生命・健康の向上に貢献する根幹的産業でありたいと願っている」と述べ、イノベーションによって日本経済をけん引する産業として期待に応える決意を示した。
根本厚労相 2040年見据え対応を 経済成長の中核産業として期待
賀詞交歓会では、根本匠厚生労働大臣(写真)、大口善德厚生労働副大臣、新谷正義厚生労働政務官がそれぞれ来賓あいさつに立った。根本厚労相は冒頭、今後現役世代人口の急減で社会の大きな変化に直面することが見込まれるとして、自身が本部長を務める「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を18年10月に設置したことを紹介し、産業側にも2040年を見据えて対応をする必要性を示唆した。
本部では、▽多様な就労・社会参加の環境整備▽健康寿命の延伸▽医療・福祉サービス改革――について19年夏をめどに検討し、給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保に向けた検討にも引き続き取り組むと説明した。
薬価制度抜本改革、流通改善ガイドライン(GL)の策定、研究開発税制の見直しなどに18年度に続き、19年度も10月予定の消費税率引き上げ、次期薬価制度改革に向けた議論、薬機法改正と「医薬品産業には大きな変化が続く」と指摘。樋口会長が迫ったイノベーションの評価について、京都大学高等研究院の本庶佑特別教授のノーベル医学生理学賞受賞を通じ「重要性を再認識した」として、官民対話などで意見交換する姿勢を示した。根本厚労相は「高付加価値知識集約型の医薬品産業は経済成長の中核を担う産業」とし、期待を寄せた。
大口厚労働副大臣は、流通改善GLに触れ、流通改善の一定の成果を認めたうえで「取引の透明化、薬価調査の信頼性確保に向け19年度以降もGLに沿って取り組むことを期待したい」とメッセージを送った。新谷厚労政務官は、製薬産業は日本経済をけん引する産業だとして「革新的新薬の創出に向けて国を挙げて環境整備に力を尽くしたい」と述べた。