生命科学インスティテュート 表皮水疱症の皮膚修復する再生医療、探索的臨床試験 静脈内投与
公開日時 2018/12/21 03:51
三菱ケミカルホールディングス傘下の生命科学インスティテュートは12月20日、遺伝子異常で日常生活のわずかな刺激で全身熱傷様の水疱、潰瘍を形成する「表皮水疱症」の治療に向け、Muse細胞を用いた「CL2020」の探索的臨床試験を開始したと発表した。静脈内投与。皮膚潰瘍部位の縮小が期待される。早ければ2020年度にも承認申請をしたい考え。
治験は、難治性潰瘍を有する12歳以上の患者で、安全性、有効性を検討する。目標症例は5例で、複数の医療機関で実施する。木曽誠一社長(写真)は、この日に東京都内で行った記者会見で、「静脈内投与により全身に分布することで、全身の皮膚症状、さらには消化管症状の改善および寛解状態の維持が期待され、患者さんのQOLの向上ができると考えている。これにチャレンジしていく」と話した。承認されれば、大学病院など大規模施設だけでなく、地域の病院でも治療できるとしている。
同社は1月、同細胞を用い、急性心筋梗塞を対象に探索的臨床試験を岐阜大学医学部附属病院などで開始したことを発表している。12月には脳梗塞の治験を東北大学病院で始めた。表皮水疱症の治験はこれらに続くもの。
流通体制は検討中
この製品はマイナス150度以下での保管・輸送が必要。承認後は地域の病院での治療実施も予定する。製造・流通体制については、同社によると、治験用製品は名古屋の細胞加工施設(CPC)で製造。承認取得後の商用生産は、神奈川県川崎市の殿町にあるライフイノベーションセンター内に新設したCPCで行う。19年1月の稼働を予定している。
治験製品の流通体制を含め詳細を開示しておらず、承認後の流通について木曽社長は、「治験ではコールドチェーンにより製品を医療機関に届ける仕組みはある。しかし、マーケティングなどを考えると、広く網羅性をもってコールドチェーンを組まなければならない事態が考えられる。現在、いろんな可能性を検討している」との説明にとどまり、どの流通企業と組むかなどは検討中だとした。
Muse 細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring cell)は、ヒトの多様な細胞に分化する能力を有する多能性幹細胞で、2010 年に東北大学の出澤真理教授らのグループにより発見された。もともと生体内の間葉系組織内に存在する自然の幹細胞であることから腫瘍化の懸念が少なく、目的とする細胞に分化誘導する必要がないため、そのまま静脈内に投与するだけで傷害部位に遊走、集積し、生着して組織を修復するという特長を持つという。