厚科審・制度部会 薬機法改正へ議論スタート 地域包括ケア時代のかかりつけ薬剤師の推進が焦点
公開日時 2018/04/12 03:50
厚生労働省は4月11日、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会を開き、医薬品医療機器等法(薬機法)改正に向けた議論をスタートした。同省は医薬分業率が70%を超える中で、「患者が医薬分業の利益を実感できていない」と問題提起。高齢化が進展し、地域包括ケアシステムが構築される中で、薬局の果たすべき役割を明確にすることで、かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局の推進を今後の制度改正の焦点に掲げた。一方で、この日の制度部会では、中川俊男委員(日本医師会副会長)が、大手調剤チェーンなどを引き合いに「医薬分業はそろそろ限界だ。弊害の方が大きくなってきている」と指摘するなど、厳しい意見が他の委員からも相次いだ。7月を目途に論点整理し、秋以降さらに検討し、年内にも意見をとりまとめる方針。
◎瀬戸際、限界 医薬分業に相次ぐ厳しい声 処方箋に病名記載の声も
この日の制度部会で、厚生労働省医薬・生活衛生局の屋敷次郎総務課長は、「医師、薬剤師がそれぞれの専門性を活かして、薬剤師、薬価の管理、処方調剤、安全に資するというのがもともとの医薬分業の主旨だ」と説明した。院内調剤と院外調剤で患者負担に格差があることなども指摘されているが、患者が医薬分業による利益を実感できる薬剤師・薬局像へと変革する必要性を強調。「地域包括ケアシステムの中で薬剤師の推進という方向性をどう作っていくのか、議論いただきたい」と述べた。
中川委員は、「営利企業である調剤大手チェーン薬局が莫大な利益を得て内部留保を積み重ねている状況できれいごとだけ言っていてはダメだ。院内処方に回帰する動きがもっとあってもいいのではないか」と述べた。
山口育子委員(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)も、「患者が利益を実感できず、機能を発揮できていない薬局があることが問題だ。医薬分業は瀬戸際にきているのではないかと感じている」との考えを表明。門前薬局などの影響もあり、かかりつけ薬剤師の意義が浸透していない実態を指摘した。その上で、薬学的知見に基づく服薬指導において処方箋と患者からの情報だけでなく、「処方箋に疾患名を入れるなども議論に入れていく必要があるのではないか」と指摘。「調剤しかやっていない、利益しか追及していないところを整理する方向で議論する必要がある」との考えを示した。
これに対し、乾英夫委員(日本薬剤師会副会長)は、「医薬分業の最大のメリットは薬物療法の安全確保と医療の質向上を実現するということだ」と表明。「複数の医療機関、診療所を受診した場合も重複や相互作用を確認することを、かかりつけ薬剤師は行っている。一元的に把握することで安心して患者は治療を受けられる」と強調した。そのほか、国民の医療への意識の高まりや、後発品の使用促進などをメリットとしてあげた。「かかりつけ薬剤師・薬局が地域包括ケアシステムの構築の中で高齢化に向けて益々進んでいく中で、適正使用に資する医薬分業は非常に重要になる。もっと質を高めていきたい」と強調した。
C型肝炎治療薬・ハーボニーの偽造品問題やチェーン薬局での処方箋付け替えなどの問題事案が発生する中で、製造・流通・販売の責務の明確化も薬機法改正のテーマのひとつ。製造販売責任者である三役(総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者)やその他の管理者・責任者の責務を明確化する。医薬品・医療機器等の製造・流通・販売にかかわる企業の経営者・役員の責務の明確化、法令遵守違反に対する改善命令以外の行政上の措置導入などを検討する。
◎ビッグデータの利活用の明確化も検討
そのほか、人工知能(AI)や核酸医薬、ゲノム創薬、がんゲノムによる個別化医療、ビッグデータの利活用など医薬品開発の現場が変化する中で、革新的な医薬品・医療機器などへの迅速なアクセス確保・安全対策も充実もテーマとなる。「技術革新に柔軟かつ効率的に対応」する規制の在り方を検討する。再生医療等製品は条件付き・期限付きで、条件付き承認が法制化されている。一方で、医薬品・医療機器の条件付き早期承認制度は現行では省令で定められており、法制化に向けた議論が進むことになる。このほか、患者レジストリーなどを通じて得られたビッグデータを承認審査や製造販売後の安全対策などに円滑に利用するための制度の明確化なども検討する。