大塚製薬 タカラバイオの3つの遺伝子治療薬、国内の共同開発・独占販売権を取得
公開日時 2018/04/10 03:50
大塚製薬は4月9日、タカラバイオとの間で、タカラバイオが創製した3つの遺伝子治療薬(開発コード:TBI-1301、TBI-1301-A、TBI-1501)の日本国内における共同開発・独占販売に関する契約を締結したと発表した。このうちTBI-1301は、厚労省から今年3月に先駆け審査指定制度の対象品目に指定された開発品で、日本で現在、「滑膜肉腫」を対象としたフェーズ1/2試験を行っている。世界に先駆けて日本で承認申請する予定。
タカラバイオは17年11月時点で、TBI-1301について2021年3月期(20年度)の承認取得を計画していたが、その後、先駆け審査の対象となり、共同開発することで、開発スケジュールが見直される可能性もある。
タカラバイオは大塚と共同開発することで、承認取得・上市の確度が高まることのほか、他の癌腫での開発を同時並行で進められることにも期待を示している。また、タカラバイオは販売体制を持っていないことから、今回、販売面の課題も解消することになる。大塚は、「遺伝子・細胞治療を含むバイオロジクス分野での研究開発を推進し、未充足な医療ニーズに取り組んでいく」としている。
契約に基づき、大塚はタカラバイオに契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストン達成金を支払う。最大約63億円となる。また、これとは別に、上市後はタカラバイオが大塚に治療薬を有償で提供するとともに、大塚は売上に応じたロイヤルティや売上目標達成の際のマイルストン達成金を支払う。
TBI-1301とTBI-1301-Aは、NY-ESO-1 siTCR遺伝子治療薬と呼ばれるもの。がん患者から採取したリンパ球(T細胞)にがん細胞を特異的に認識するTCR(T細胞受容体)遺伝子を体外で導入し、培養によって増殖させた後に治療薬として患者に輸注する。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、がん細胞を特異的に認識して攻撃し、消滅させる効果が期待されている。
TBI-1301のターゲットとしている滑膜肉腫は悪性軟部腫瘍のひとつで、悪性度が高く、局所転移及び遠隔転移を生じる予後不良の疾患。滑膜肉腫症例ではNY-ESO-1抗原発現率が高く、NY-ESO-1抗原が比較的均一に腫瘍組織全体に発現し、細胞あたりの発現量が高いとの特徴があるという。
TBI-1501はCD19・CAR遺伝子治療薬と呼ばれるもの。多くのB細胞性リンパ腫のB細胞の表面に発現しているCD19というタンパク質(抗原)を特異的に認識するCAR(キメラ抗原受容体)の遺伝子を、患者由来のリンパ球に導入し、再び輸注することによりがん治療を行う。日本では現在、成人の急性リンパ芽球性白血病を対象にフェーズ1/2試験を行っている。