【World Topics】AHA下院を通過
公開日時 2017/05/09 03:50
トランプ政権の 医療保険改革法案 である American Health Care Act(通称AHA )が5月4日(木)米国下院での最終決議で採択された。賛成217対反対213の僅差で、民主党議員全員に加え、20名の共和党員が反対票を投じた。
AHAはPaul Ryan下院議長が提出し、3月下旬に最終決議の予定で審議がすすめられていたものの、予定期限内に共和党内の意見をとりまとめきれず、いったん審議未了のまま最終決議を見送って、審議取り下げとなっていた。
今回採択された法案は、共和党内の反対派との協議結果が盛り込まれた修正案で、今後は、上院での審議を待つことになる。これによりトランプ大統領および多くの共和党議員は「オバマケア撤廃」の選挙公約実現への第一歩を踏み出した。
AHAはオバマケアの実質的な廃案・代替を狙う。
連邦政府としては、オバマケアが米国居住者に課した医療保険購入義務(具体的には医療保険を持たない居住者に確定申告時にペナルティを課す)を廃止する。これにより、オバマ政権がめざした米国流国民皆保険実現への道は閉ざされる。また高額所得者やヘルスケア大手企業への追加課税を撤廃するとしており、これにより医療保険改革のための予算は下方修正されざるをえない。
州政府の権限に関しては、AHAはオバマケアの規制の採否を州政府の自由裁量に任せるとしており、これにより、たとえば保険会社が既往症を理由に一部国民の保険への加入を制限し、あるいは高い保険料を課すことを認める権限が州政府に与えられる。またオバマケアによって拡大されたメディケイド給付枠は撤廃され、また妊娠中絶費用への公的負担は停止される。
予測の正確さで定評のある米国議会予算局は、3月に審議取り下げとなった先のAHA に関し、法案実施の影響として、向こう10年間で2400万人が無保険者となると予測していたが、今回の修正法案の政策効果については発表されていない。(医療ジャーナリスト 西村由美子)