国がん 進行がん高齢患者で抗がん剤治療の有効性評価が必要 予備調査で指摘
公開日時 2017/04/28 03:50
国立がん研究センターは4月27日、進行がんの高齢患者での適正な治療を検証するために行った予備調査の結果を発表し、進行がんの高齢患者での抗がん剤治療について有効性の評価のため大規模調査が必要と指摘した。
高齢者に対するがん治療では、体力面から抗がん剤の投与が難しいケースもあり、適切な治療について課題があるという。そこで日本医療研究開発機構から委託されたみずほ情報総研の依頼を受けた国がんが予備調査の形で、2007年から2008年に同センター中央病院を受診した肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんの患者の約6900人を対象(同院のがん登録データ活用)に、抗がん剤治療と緩和治療(放射線治療含む)での生存日数を非高齢者と高齢者を比較した結果、「臨床的、統計的に意味のある結果を得ることができなかった」という。70歳以上の高齢者が全体の2割と少なく、同院の患者層が日本全体を代表していないためで、同センターは「全国がん登録などのデータベースと死因統計を用いた大規模調査により解析を行うことが必要」と指摘した。
この中で肺がんについては、75歳以上で抗がん剤治療ありとなしの両患者群において有効性に「それほど大きな差はなかった」との示唆は得られたが、被験者数が抗がん剤ありが8人、なしが11人と非常に少ないことから「評価することは困難」と結論づけている。
大腸がんにおいても、「IV期では抗がん剤治療を施行した患者の方が生存時間も短く、いずれの年齢でも同様の傾向であった」としたものの「大腸がんではIV期の患者においても手術治療で治る患者がいるために同じIV期であっても生命予後が患者毎に大きく異なる」と説明している。
そのほか乳がんでは「高齢者で全身治療の適応となった患者が少なく、治療の効果は判断できない。抗がん剤治療の有無以外にも、ホルモン治療などが有効な患者群がいることも評価を難しくしている」としている。胃がん、肝がんについてはは高齢患者のみのでは解析対象者数が少なく評価できなかったという。
<訂正>(4月28日午後12時15分)
「みずほ総研」との表記は、正しくは「みずほ情報総研」でした。下線部を訂正しました。