キョーリン製薬・穂川社長 フルティフォーム、デザレックス、AGに注力 キプレス特許切れ影響を吸収
公開日時 2016/11/09 03:52
キョーリン製薬ホールディングスの穂川稔社長は11月8日に開いた2017年3月期第2四半期の決算会見で、連結売上の3分の1を占める気管支喘息・アレルギー性鼻炎用薬キプレス(一般名:モンテルカスト)に後発医薬品(以下、GE)が12月に初参入する減収要因を、新薬群とキプレスのオーソライズド・ジェネリック(以下、AG)の伸長によって吸収し、医療用医薬品事業で前年並みの通期売上を確保する考えを示した。新薬群では特に喘息治療薬フルティフォームと、今月中に発売を予定する抗アレルギー薬デザレックスに注力する。
同社の16~19年度の現中期経営計画の最大の課題は、キプレス(15年度売上441億円)のパテントクリフをどのように乗り越えるか、ということ。穂川社長はこの日、「新薬の連続上市と成長加速で乗り越える」と改めて表明するとともに、16年度は特に▽フルティフォーム▽デザレックス▽キプレスAG――に注力して、「(医療用医薬品事業の売上は)何とか前年比で横ばいを確保したい」と述べた。
医療用医薬品事業の16年度通期計画は1140億円(前年比横ばい)と設定している。キプレスの通期計画は333億円(同108億円減)だが、フルティフォームは同129億円(57億円増)、デザレックスは同19億円、GE・AG事業が同215億円(60億円増)――を目指す。
■フルティフォーム 非専門医、調剤薬局にエアゾール製剤の有用性・簡便性を訴求
フルティフォームの上期実績は54億円で、通期計画に対する進捗率は42%。一般的な吸入器が患者の吸引力で服薬するものなのに対し、フルティフォームはボタンを押すと薬剤が噴出するエアゾール製剤。下期は、非専門医や薬局薬剤師へのエアゾール製剤の有用性・簡便性の訴求を強化するなどして目標達成を目指す。
デザレックスは1日1回経口投与の第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬。有用性のほか、眠気を起こしにくく添付文書などで自動車運転等の注意記載がないこと、食事の影響を受けないこと――など利便性の高さを訴求する。杏林製薬は内科と耳鼻科を、共同販促する科研製薬は皮膚科でプロモーションし、「全体として高いシェアオブボイスを確保していく」(穂川社長)としている。
■キプレスAGで先発品3割減収、9月単月実績
キプレスAGはGEに先駆けて9月1日に新発売した。後発品志向の調剤薬局や患者に薬剤選択できる環境を早期に構築し、「GEが登場する前にAGを調剤薬局や患者に選んでもらい、その後のGEの参入障壁とする」(穂川社長)との戦略でのぞむ。AGの立ち上がりは好調で、上期売上は18億円と当初見込みより8億円上振れした。
AGの好調に伴い、キプレスと、いわゆる一物二名称で共同販売するMSDのシングレアは、9月単月の薬価ベースの実績で、そろって3割減になったという。穂川社長は「9月のAGの状況は一時的な納品との側面もある。もう少し様子を見る必要がある」と述べ、AGの調剤状況を注視していく姿勢をみせた。また質疑では、シングレアの納入先にも積極的にAGを営業していくのかとの質問がでたが、これに杏林製薬の梶野国雄・医薬営業本部長は、「ニーズがあれば、シングレアの納入先にもしっかり情報提供していくことになる」と述べた。
■新規キノロン系合成抗菌薬ラスクフロキサシン 17年中に承認申請
穂川社長は開発品について、新規のキノロン系合成抗菌薬ラスクフロキサシン(一般名、開発コード:KRP-AM1977X)を17年中に承認申請し、18年度の上市を目指すことも説明した。1日1回経口投与で用いる。標的組織(肺)への優れた移行性を示すことが最大の特徴。フェーズ3試験では懸念されるような血糖値異常などはみられなかったという。穂川社長は「我々が最も得意とするキノロン系抗菌薬であり、これまでのキノロン系抗菌薬の概念を超えるキノロンと位置づけている」と期待の高さを示した。
同社の17年3月期第2四半期決算の記事は、11月8日に既報。