武田テバファーマの松森浩士社長は10月７日、東京都内で本誌インタビューに応じ、長期収載品と後発医薬品で構成する「オフ・パテント・ドラッグ（OPD）市場」で2020年代にトップシェアになると表明した。18年度以降本格化する“地域包括ケアシステム”をにらみ、医療提供体制の変化や在宅医療の推進、さらには高齢化に伴う医療需要増によって、より安価なベース薬（＝治療の基本となる医薬品）のニーズが高まるとし、「（地域単位で）ワンストップショッピングが行われる市場になる」と指摘した。その上で、主要疾患領域をフルラインナップした800品目のOPD製品群を武田薬品の流通網にのせて安定供給できる強みを最大限発揮して、地域包括ケア時代の中心的な存在になると語った。

武田薬品とGE最大手のイスラエルのテバ社は今年４月にOPD製品を扱う合弁事業を開始し、10月に「武田テバ」との社名で合弁事業が本格始動した。松森社長、武田薬品で国内事業トップを務める岩﨑真人取締役（下写真、右）、テバで成長市場の責任者を務めるエレズ・イスラエリ・グロースマーケット社長（下写真、左）がこの日、そろってインタビューに応じた。

■19年までにOPD市場で主導的立場に

松森社長はトップシェア実現のカギに、地域包括ケアによる“ワンストップ”市場の到来と、業界環境の変化をあげた。特に、伸び続ける医療費を抑制するため、後発品の薬価が一層引き下げられると予測。産業側の視点として、ローコストオペレーションを実現するため規模（シェア）の追求に向かい、数年後には企業合併を含む業界再編が起こるだろうと見通した。その上で、「医療機関や薬局の採用口座が再配分される時は、最も信用される企業に自然とシェアが集まる。当社がその時に選ばれる重要な存在になっていることが重要だ」と述べ、品質、安定供給、情報提供、品揃えで市場からの信頼を醸成し、19年までにOPD市場で主導的な立場になると表明した。

武田テバのローコストオペレーションの取り組みには、▽国内の販路をタケダ流通（特約店）に一本化し、在庫負担減（＝適正在庫）と安定供給を可能とする▽グローバルに展開するテバ社のスケールメリットを生かした原薬や生産設備の使用――などがある。

松森社長はタケダ流通への販路一本化について、「（過度な卸間競争から）順当な競争におさまり、結果的に取扱い製品のライフサイクルを維持できる」と強調。この強みを活かすことで、エリアの医療需要に見合った品揃えとともに、地域ごとに異なる顧客ニーズ（地域医療連携推進法人など病院グループ、在宅医療、チェーン調剤薬局など）に十分対応できると期待感を示した。

■ストラテジー、流通、アライアンスの各担当者　武田から武田テバに出向

今回の合弁事業では、武田薬品から武田テバグループに、長期収載品約30製品の移管とともに、ＭＲを中心に60人が出向している。岩﨑取締役は「事業計画を立てられるストラテジーのプロ、流通のプロ、アライアンスのプロにも出向してもらった」と明らかにした。この理由について岩﨑取締役と松森社長は、OPD製品を扱うＭＲや担当者には、▽パッケージで物事を考えらえる▽よりB to Bの観点を持つ▽経営的な視点に立った提案ができる▽医師や薬剤師の話を広く浅く概ね理解できる――といった資質が求められるためと説明した。

■「日本も他国と同じ傾向」　各国市場は数社の寡占状態

世界各国の後発品市場の動向に精通しているイスラエリ社長は、「日本も他国と同じ傾向にある」と述べ、医療費削減のため、後発品の使用促進とともに後発品価格の引き下げに向かうと指摘した。そして各国では後発品の使用割合が高いが、各国ともシェア上位４、５社が市場を独占しており、日本も今後寡占に向かうとの見方を示した。この見方は前述の松森社長だけでなく、岩﨑取締役も同様。

イスラエリ社長によると、シェア上位の企業ではそろって▽幅広いポートフォリオ▽グローバルコストへの取り組み（＝ローコストオペレーション）――が要件。さらに日本では▽ブランド力▽医薬品卸など顧客との深い関係――も重要と説明し、「タケダ以上のパートナーは考えられない」と話した。

インタビューの全文はミクス11月号（こちら）に掲載します。