PhRMA・スキャンゴス会長 高額薬剤議論で「薬価引き下げだけでは制度を持続可能にできない」
公開日時 2016/06/02 03:50
米国研究製薬工業協会(PhRMA)のジョージ・A・スキャンゴス会長(バイオジェン社CEO)は6月1日の記者会見で、高額薬剤議論について言及し、「薬の値段を下げるだけでは医療制度を持続可能にできない」と述べた。また、ドラッグ・ラグを拡大させないためにも、イノベーション重視の政策を維持することの重要性を強調し、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の恒久化を訴えた。また改めて毎年薬価改定に反対する姿勢を強調した。
◎ 薬価引き下げ「長期的には利益にならない」 医療費全体での議論を
急速な高齢化に伴い、医療費が高騰している日本の現状を「外側からみると、いま日本は分岐点に立っているように見える」とスキャンゴス氏は指摘した。
薬剤費の高騰が問題視される中で、2016年度薬価制度改革では特例拡大再算定が試行的導入され、現在も抗がん剤・オプジーボに端を発した適応追加の際の臨時の薬価改定など、薬価の引き下げに関連する議論がなされている。
スキャンゴス氏は、こうした制度の変更により、予見可能性や安定性が損なわれた結果、日本への開発投資の縮小などにより、イノベーションが阻害されることに懸念を示した。その上で、薬価の引き下げなどの施策は「短期的には有効に思えるが、長期的には日本の患者やヘルスケア関連企業、日本経済の利益になる戦略ではない」との見方を示した。
仮にすべての薬価を20%引き下げても、薬剤費は医療費全体の約20%であることから医療費の4%を削減するにとどまると説明し、「医療費全体の問題を解決できない。新薬の薬価引き下げは、医療費全体のコストの問題から目をそらすことになる」と述べた。C型肝炎治療薬などでは、治療により入院や再治療の必要性がなくなると説明し、「医療費削減について総体的な見解を持たなければならない」と述べた。
◎後発医薬品使用でコスト削減の余地も指摘
新薬創出に関しては、開発コストが高騰している現状も説明し、「企業であるからには、株主がいる。利益を出さなければ、新たな薬も出せないことを受け入れてビジネスを行っていかなければならない」との見解も表明。ハイリスクハイリターンである製薬ビジネスの投資が回収できるよう、予測可能性が高く、またイノベーションを重視する政策の実施を求めた。また、患者が早期に新薬にアクセスできる環境整備の重要性も強調した。一方で、医療費適正化の観点からは、後発医薬品の使用促進によるコスト削減の余地があるとの見方も示した。