製薬協 研究者主導臨床研究の支援で指針公表 透明性確保で臨床試験の質向上も
公開日時 2016/02/10 03:51
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写真左から田中徳雄常務理事、川尻邦夫・コード・コンプライアンス推進委員会実務委員長 |
日本製薬工業協会は2月8日、「医療用医薬品等を用いた研究者主導臨床研究の支援に関する指針」を公表した。自社医薬品に関連する、研究者自らが発案した”研究者主導臨床研究(医師主導臨床研究)”での資金提供のあり方を明確にした。具体的には、資金提供に算定根拠や妥当性の確認を求めたほか、契約書のひな形などを提示。利益相反や研究結果を透明性ガイドラインに則り公表することを支援条件として契約書などに記載することも盛り込んだ。製薬協の 田中徳雄常務理事は本誌取材に対し、「製薬企業は、透明性と説明責任を果たしたうえで、必要な臨床研究は支援する。指針は、規制するためのものではなく、 質の高い研究者主導臨床研究を進めるためのものだ」と説明した。契約により経費が明確化されることで、適切な産学共同の実施、臨床試験の質向上も期待される。
降圧薬・ディオバンの臨床研究不正問題の発覚以降、自社医薬品に関連する臨床研究の実施に際しては委受 託契約、共同研究契約による実施が求められてきた。企業主導臨床研究では今後もこうした契約が求められる一方で、研究者主導臨床研究についてどのような契約をすべきか、明確になっていなかった。こうした中で、製薬協では委員会横断型のプロジェクトを発足さ せ、検討を重ねてきた。検討過程では、国立大学附属病院長会議、国立大学附属病院臨床研究推進会議など、研究者や事務方などのアカデミア側からの意見も集約したという。
◎経費は“算定根拠”求める 間接経費は内容と金額の妥当性確認も
資金提供に際しては、研究以外の目的に流用されないよう“算定根拠”と“金額”を明確にし、内容と金額の妥当性を確認した上での資金提供を求めた。物品費、旅費、人件費、会議費などは、直接経費として積算する。光熱費などの間接経費については業務内容を明確にする必要性を強調し、「使途を示す資料を入手し、内容と金額が妥当であることを確認できれば提供してよい」とした。研究終了時の残余金についての清算なども契約書に記載することを求めた。
指針は、▽営業部門から独立した組織での実施など社内体制の整備や業務手順書の作成、記録の保存などガバナンスの強化、▽契約ひな形の提唱、▽資金提供など支援内容の明確化、▽安全性情報の入手、利益相反・情報公開など義務の明確化――が柱となっている。
とりまとめに携わった川尻邦夫・コード・コンプライアンス推進委員会実務委員長は、「指針では、最大公約数的に可能なことを示した。個別の案 件については、各企業と各大学で契約を締結する際に詰めていくことになる」と説明。「医師の自由な発想に基づく研究をしていただくことがスタートライン。 情報公開の流れの中で、製薬企業がどう支援していくか。産学連携を進めるうえでもポイントになるのではないか」と述べた。