厚労省 電子処方せんを4月にも導入 電子版お薬手帳と連携でかかりつけ薬剤師の服薬管理後押し
公開日時 2016/02/08 03:52
厚生労働省は2月5日までに、電子処方せんを4月にも導入する方針を固めた。各地域で構築が進む地域医療連携ネットワークを基盤に、電子処方せんを介して医療機関と保険薬局で患者情報や後発医薬品などの調剤情報などを相互に共有することで、医薬品の適正使用推進、医療の質向上が期待される。電子版お薬手帳と連携させる仕組みも構築し、かかりつけ薬剤師が行う一元的な服薬管理を後押しする。患者にとっては、旅行や引っ越しなど、かかりつけ医、かかりつけ薬局を受診できない場合も服薬管理が容易になる。実証事業を行った大分県別府市など地域医療連携ネットワークが構築された地域での導入を進め、全国的な浸透を目指す。同省は、導入に向けて電子処方せんの運用ガイドラインの策定、e-文書法に基づく厚生労働省令改正を行う。運用ガイドライン案は2月10日に開かれる「第29回医療情報ネットワーク基盤検討会」(大山永昭座長・東京工業大学像情報工学研究施設教授)で提示される予定だ。
電子処方せんをめぐっては、昨年6月に日本の成長戦略として閣議決定された「日本再興戦略改訂2015」の中短期工程表で、2015年度末までに電子処方せんの運用のためのガイドラインを策定することが明記されていた。
電子処方せんは、アプリケーションサービスプロバイダ(ASP)が提供するサーバが発行する「処方せんID」と「確認番号」をカギに運用される。医療機関が処方内容や処方せんIDなどが記載された「電子処方せん引換証」を発行し、患者が薬局に提出。薬局では、処方せんIDにより、サーバにある「電子処方せん」を確認し、調剤する。調剤データは、患者の依頼に基づき、電子版お薬手帳の運営主体に送信される仕組みだ。セキュリティーの観点から電子メールでのやり取りはガイドラインでは採用されなかった。
◎後発医薬品などの調剤情報 保険薬局と医療機関で共有
仕組みの構築により、保険薬局は電子処方せんとともに、患者の診療情報やアレルギー歴などを把握することで、適切な服薬指導を行うことが可能になる。一方で、医療機関にとっては、これまで少なかった保険薬局から調剤情報のフィードバックを受けることとなり、患者の服薬アドヒアランスなどを踏まえた処方などを行うことも可能になる。後発医薬品について「一般名処方や後発品への変更調剤が今後も増加することを踏まえれば、処方した医師への調剤結果の伝達が容易になることは、重要である」とガイドライン案にも明記し、後発医薬品使用促進の観点からもメリットががあるとしている。そのほか、保険薬局にとっては、紙の処方せんの印刷や管理コストの削減、処方せんの偽造や再利用を防止できるメリットもある。
一方で、電子処方せんに対応できない保険薬局では、「電子処方せん引換証」を無効化し、紙に転換することで、調剤できることも明記した。具体的には、患者の了承を得た上で、「電子処方せん引換証」のタイトル部分の「電子」「引換証」を二重線で抹消し、抹消した部分に薬剤師が押印する。ただ、地域医療連携ネットワークの広まりで、「医療機関と薬局との情報連携や患者自らによる服薬情報の管理が一層進んでいく。全国でそうした取組が進んでいくことで、電子処方せんが普及し、一般的になっていくと考えられる」としており、電子化の流れは避けられないとの見方も示した。
そのほか、分割調剤の際は、現行の運用では患者に紙の処方せんを返却する必要があり、紙の処方せんに転換した上で、電子処方せんを削除するなどの対応も求めている。