【World Topics】エイズよりも深刻、米国の薬物過剰摂取問題
公開日時 2016/02/01 03:50
鎮痛剤など処方薬への薬物依存・過剰摂取による死亡事故の問題がかねてから指摘されている米国。年頭の米国 CDC週報(1月1日)があらためて問題の深刻さを浮き彫りにした。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6450a3.htm?s_cid=mm6450a3_w
CDCによれば、2014年には1日平均125人が薬物の過剰摂取で死亡しており、総死者数は 47,055人で史上最高を記録した。人口10万人あたり15人という死亡率は2002年(10万人あたり8人)の2倍以上で、本来病気を治すはずの医薬品があらゆる疾病以上に急激に死亡率を伸ばしているという皮肉な状況だ。
最新データはCDCのホームページからダウンロードできる。
http://www.cdc.gov/drugoverdose/data/statedeaths.html
薬物の過剰摂取に起因する死亡率の上昇は、かつて1980年代から90年代にかけてのHIVエイズによる急激な死亡率の上昇をしのぐ勢いで伸びていると指摘されている。しかも、エイズが比較的に都市限定的な問題であったのに対し、薬物の過剰摂取による死亡は、地域を問わず全米に拡大しており、より深刻だ。これらの状況から、疫病ではないが、エピデミックとして考えるべきだとの意見も聞かれる。対策が急がれる。
下図は2002年(左上)から2014年(右下)までの 人口10万人あたり死者数の年次推移を示した 地図である。赤色が濃い地域ほど死亡者が多い。