中医協・費用対効果評価専門部会 1,2回改定経た製品が対象 業界側は原価計算方式には反対
公開日時 2015/11/24 03:50
中医協費用対効果評価専門部会は11月20日開かれ、費用対効果評価の試行的導入に向けて対象品目など骨子が示された。この日厚労省が提示した案では、対象品目の要件として、保険収載後1、2回の改定を経た予想ピーク時売上高の高い医薬品で、有用性加算など一定の補正加算のある類似薬効比較方式、もしくは原価計算方式で算定することをあげた。指定難病、血友病、HIV感染症など治療法が十分に存在しない医薬品や、未承認薬等検討会議及びニーズ検討会からの開発要請品目、公募品目は除外する。これに対し、専門委員の加茂谷佳明氏(塩野義製薬株式会社常務執行役員)は、「(比較薬を置くことの難しい)原価計算方式で算定された新薬を対象にするのは困難ではないか」との考えを示した。対象品目は今年度内に決定する方針。
厚労省は、対象品目について、算定方式や加算の有無、売上高、対象年度を軸に案を提示した。加茂谷委員は、原価計算方式の医薬品は、適切な類似薬がないために原価計算方式で算定されていると説明し、「比較薬の存在しない新薬を対象に、何ならかの比較対象を置いて費用対効果評価を行い、仮に薬価が引き下がるような状態になれば、現行の原価計算方式そのものを否定する」と指摘した。これに対し、厚労省保険局医療課の眞鍋馨企画官は、中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドラインを引き合いに、「比較対象は無治療や経過観察を用いることもされており、直ちに対象にならないとの考え方はしていない」と説明した。
費用対効果を判断する上では、▽一般的に広く受け入れられている既存の医療にかかわる費用、▽国民がいくら支払っても良いと考えるか、▽一人当たりGDPなどの経済指標――を参考に、金額を決め、一定の幅をもたせて判断を行うことも提案された。再算定に際しては、薬価算定組織または保険医療材料専門組織の通常の再算定方法を用いた後に行う。効果指標は、質調整生存年(QALY)を基本としつつ、その他の指標の活用もガイドラインに盛り込まれた。
◎次期診療報酬改定 医療経済実態調査で黒字傾向を支払い側指摘
中医協総会は同日開かれ、次期診療報酬改定に向けて医療経済実態調査の分析結果が診療側、支払い側から提示された。支払い側は、2009年度からの中長期トレンドを提示し、医療機関、保険薬局などが黒字傾向を示していることを指摘した。特に保険調剤薬局で伸びがきわだっており、医業・介護収益、費用ともに拡大傾向で損益分岐点が上昇傾向にあるとした。
一般病院についての損益差額率では全体では‐3.1%だが、医療法人では2.0%、個人では6.2%と黒字を維持しているとした。支払い側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「全体的に増収傾向にあるが、固定費も伸びており、結果として損益分岐点収益が上昇している状況にある」と分析した。一般病床については病床別ではすべて赤字となったものの、公立病院を除く50~299床の中小病院では黒字を維持していた。また療養病床60%以上の病院は黒字であるとした。
公立病院の経営には問題意識を示し、損益差額率は-9.8%と赤字で、補助機などを含めた損益差額率でも赤字となった。この原因として支払い側は、▽看護職員、医療技術員、事務員、技能労務員などの年収が医療法人よりも2~5割高い、▽収益に占める医薬品費・委託費、減価償却費の割合が高い――ことなどをあげた。
一般診療所、歯科、保険薬局はいずれも黒字だとした。一般診療所は有床・無床、個人・医療法人のいずれも黒字で、特に医療法人で高い黒字となった。診療科別でもすべての診療科で黒字とし、眼科、外科、整形外科などで損益差額率が増加している傾向があると指摘した。
これに対し、診療側は前回改定時からの比較を示し、損益差額率が一般病院で1.4%(-1.7%→-3.1%)、一般診療所で0.6%(16.1%→15.5%)に悪化したと説明。一般病床ではすべての病床規模で連続赤字となり、一般診療所は全体では減収減益だと主張した。また、精神科病院の損益差額率は0.4%から0.7%でほとんど改善しなかったとした。保険薬局についても、法人薬局を含め、いずれも損益差額率は前年比マイナスであると主張。6~19店舗の法人薬局のみが伸びを示したが、「1店舗」、「2~5店舗」の施設では損益が半減、1店舗の薬局では赤字と厳しい状況であるとした。診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「消費税率の引き上げに伴い補填が行われたことを考慮すると、調査結果の数値以上に厳しい」と述べた。