社保審・医療部会 次期診療報酬改定基本方針骨子案を大筋了承
公開日時 2015/11/20 03:51
次期診療報酬改定を控え、厚生労働省は11月19日、社会保障審議会医療部会に改定の基本方針骨子案を提示し、大筋で了承された。2025年にも超高齢化社会が到来することが想定される中で、地域包括ケアシステムの推進、外来診療や退院支援まで含めた“医療機能”の分化・強化、連携を行う改定に位置付けた。高齢化がすすみ、複数の慢性疾患を抱える患者が増加する中で、“かかりつけ”機能を重視。患者に応じた診療を行うようかかりつけ医の機能評価を高めるとともに、残薬や多剤、重複投与などの減少に向けて医薬品の適正使用を進める、かかりつけ薬剤師・薬局を評価することも盛り込んだ。一方で、いわゆる門前薬局の評価適正化も進める。そのほか、後発医薬品の使用促進・価格適正化、長期収載品の仕組みの検討も盛り込まれた。基本方針は、きょう20日に開かれる社会保障審議会医療保険部会を経て、とりまとめられる。
改定の基本方針は、「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携」に関する視点を重要課題に、▽患者にとって安全・安心で納得できる効率的で質が高い医療を実現できる、▽重点的な対応が求められる医療分野を充実する、▽効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める—の4つの視点から具体的方向性を示した。
後発医薬品については、数量シェア80%という新目標が示されるなかで、実現に向けた診療報酬上の取り組み、価格適正化に向けた価格算定ルール、長期収載品の価格引き下げルールについての見直しを盛り込んだ。
残薬や多剤、重複投与を減らすための医薬品の適正使用の推進では、医師、薬剤師の協力による取り組み推進の重要性を強調。それぞれの“かかりつけ機能”を評価することを盛り込んだ。かかりつけ医については、複数の慢性疾患を抱える患者に対し、個別の疾患だけでなく、療養上の指導、服薬管理、健康管理などの対応を継続的に実施することを評価する。2014年度改定では、診療所や中小病院の外来での主治医機能を評価する地域包括診療料、地域包括診療加算が新設されたが、こうした機能分化をさらに推し進める。
かかりつけ薬剤師・薬局については、患者の薬物療法の有効性・安全性確保の観点から服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう評価する。一方で、こうしたかかりつけ機能をもたない門前薬局の評価を見直すなど、患者本位の医薬分業を実現するために調剤報酬を見直すことも盛り込んだ。
◎多剤併用で議論 原因は長期処方?
この日の社保審では、残薬や多剤、重複投与をめぐる議論があった。日本医師会副会長の中川俊男氏は、残薬、多剤併用の問題は長期処方の増加にあると主張。処方日数が年々伸び、90日処方が常態化する事態を問題視し、「行き過ぎた長期処方の是正という言葉をぜひいれていただきたい」と述べた。
これに対し、厚労省保険局の宮嵜雅則医療課長は、長期処方が残薬、多剤併用の原因となる可能性を認めた上で、「処方箋をそういう形で制限するのかどうか、ということにもつながる」と述べ、中医協での議論を求めた。
中川氏はさらに、多剤併用について必要があれば行うことを地域包括診療加算で認めているとの認識を示した上で、「今回の改定は逆行している。現場では不必要な薬をたくさん出しているわけではない」と強調した。
調剤報酬については、NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長は、院外処方では院内処方に比べ患者負担が増えることに言及し、「患者負担がそこまで増えない方向での見直しをお願いしたい」と述べた。
また、将来を見据えた課題として、「予防・剣道作りやセルフケア・セルフメディケーションの推進、保険外併用療法の活用等について広く議論が求められる」とされた。患者申出療養の新設が検討されている中で、経済的に裕福な人との格差が生まれることへの懸念も示された。
そのほか、この日厚労省側は「医療費の伸び率の要因分解」の資料を提示。要因のひとつに診療報酬改定がある。2014年度改定は、実質的にはマイナス改定だったものの、消費税増税があったために見かけ上プラスに転じており、0.10%と記載されている。この資料について、全日本病院協会の西澤寛俊会長、日本医師会の中川副会長らから、2010年度から3回連続プラス改定との誤解を生むと指摘。厚労省側は、指摘を踏まえて資料の修正を検討するとしている。