アステラス 米・バイオベンチャーOcata社 約467億円で買収 眼科領域、細胞医療強化
公開日時 2015/11/11 03:51
アステラス製薬は11月10日、米・バイオベンチャーのOcata社(本社:米・マサチューセッツ州)を約3億7900万ドル(約467億円、1ドル=123.2円換算)で買収すると発表した。Ocata社は、ヒト胚性幹細胞(hES)細胞株から分化誘導したRPE(網膜色素上皮)細胞を網膜化に注入移植する技術治療法を開発しており、眼科領域における細胞医療に強みをもつ。同社の畑中好彦代表取締役社長は、眼科領域を重点戦略領域のひとつに設定しており、「眼科、再生医療の双方についてアステラスの研究開発を加速、強化させるのに必要なケイパビリティを備えており、これらの挑戦を推進する重要なステップとして同社の買収を決断した」と述べた。
会見で畑中社長は、買収の戦略的意義として、▽眼科領域におけるプレゼンスの確立、▽世界トップクラスのケイパビリティの獲得により、細胞医療におけるリーディングポジションの確立――をあげた。中期経営計画でも眼科領域は重点領域のひとつにあげており、経営計画を達成する上でも同社の買収が必要と判断したと説明した。
Ocata社は、多能性幹細胞から分化細胞を取得する基盤技術と細胞医療の臨床開発に強みをもつ。従業員数は39人。ヒト胚性幹細胞(hES)細胞株から分化誘導したRPE(網膜色素上皮)細胞を網膜化に注入移植する技術治療法を開発し、パイプラインには臨床第2相試験実施中の委縮型加齢黄斑変性、臨床第1相/2相実施中のStargardt病がある。米国での眼科領域における強固なネットワークも同社の強みのひとつだ。
会見で登壇した同社の内田渡執行役員研究本部長は同社の強みについて、「技術的には、多能性幹細胞から目的とする細胞を分解誘導できる能力をもっていること、眼科領域について分化する細胞のセットがあること」と説明。その上で、早期に、かつグローバルに医薬品を上市する上で製薬企業の経験やノウハウは大きいとの考えを示し、同社とのシナジー効果により「いち早く最先端の細胞治療の製品を患者に届けることができる」と強調した。さらに、同社の強みについて、「他社、社会との連携しながら早くから再生医療を目指した新しい技術を取り組んできた。土地勘、目利きがあった」とした上で、「他家移植の増加により、免疫反応が出る中で、タクロリムスを中心に免疫を制御する経験がある。再生医療を進める中で、より我々の強みになってくる」と自信をみせた。
買収は1株当たり8.50米ドルで、2015年11月6日終値(4.75米ドル)に79%のプレミアムを付ける。米子会社Laurel Acquisitionを通じた公開買い付けで買収する。買付期間は、11月25日までに開始予定で、20営業日以内に終了する。資金は、全額手元資金をあてる。当期業績への影響は軽微としている。