クリントン大統領候補 薬価にメス入れる方針を示す「製薬企業は厳格な精査に直面する」
公開日時 2015/09/28 03:50
ヒラリー・クリントン前国務長官(民主党大統領候補)は9月22日、自身が大統領に就任した際には、高薬価への対応を厳格にするため、患者負担に上限額を設ける考えを示した。米・アイオワ州デモインで開かれた支持者の集会で講演する中で明らかにした。同日、米・一般紙「New York Times」、「USA Today」などが報じた。
クリントン氏は、高薬価であっても価格交渉が禁止されていたメディケア(公的高齢者保険)に価格交渉権をもたせること、慢性疾患を持っている患者には自己負担の上限を設けることなど、オバマケアにおける短所をカバーすることが中心になるとの見方を示した。
近年、新薬での高薬価が問題となっている点については、大手医薬品企業は、同氏が大統領に就任時には「厳格な精査に直面することになる」と述べ、薬価にメスを入れることを示唆した。
クリントン氏は、「このようなこと(が起きるの)は、市場がうまく機能していないからだ。他人の不幸を食い物にする連中だ」と当事者を非難した。さらに、「医薬品企業は、投資を回収するよりはるかに高い天文学的料金を請求することができる」と現在の自由価格市場が適切に機能していない点を問題視した。
◎薬価を13.5ドルから750ドルに引上げ
薬価について、21日に米ベンチャーのTuring Pharmaceuticalsが、トキソプラズマ症(トキソプラズマ原虫感染症)治療薬であるDaraprim(ピリメタミン)を8月にある企業から取得、1錠13.50ドルの価格を750ドルに値上げしたことや、米Purdue Research Foundation(PRF)の結核治療薬Seromycin(サイクロセリン)が米Rodelis Therapeuticsへの売却後、Purdueに返還され、価格が約2倍になったことなど薬剤が投機的に扱われる事例が発生したことが背景になったこともあるようだ。PRFは、Purdue Universityの関連団体。
Turing Pharmaceuticalsは、前ヘッジファンドのマネジャーだったMartin Shkleri氏が経営している。ピリメタミンはすでに上市後62年経過する古い薬剤だが、トキソプラズマ治療薬は利益を上げられないので製薬企業は無視してきたと指摘した。その上で、今後、医師を教育しながら、よりよい薬剤を開発すると話している。売上を今後の投資に振り向ける考えのようだ。
サイクロセリンは、1955年に発売、イーライリーが製造していた。同社は2003年から人道的観点に基づき、同剤の権利を中国、インド、南アフリカなどのジェネリック医薬品企業に譲渡し始めた。
Rodelisは、今年8月にサイクロセリンの権利をPRFから取得、同剤の価格をRPF時の30カプセル500ドルから10800ドルに引き上げた。しかし、同社はすぐに同剤を戦略が思い通りでなかったとの理由で同剤をPRFに返還した。返還後、同剤の価格は、30カプセル1050ドルとなった。PRFの薬価も2倍となったが、PRFのDan Hasler理事長は、新薬価は損失を補うものと説明している。