厚労省 ファイザーに業務改善命令 抗がん剤など212例の副作用報告遅延、安全管理情報収集義務違反で
公開日時 2015/09/02 03:50
厚生労働省は9月1日、抗がん剤など11製品、212例の副作用報告義務の遅延、安全性管理責任者らの安全管理情報の収集義務を怠ったとして、医薬品医療機器法(薬機法)にもとづき、業務改善命令を出した。副作用のうち、未知・重篤なものは67例含まれていた。厚労省は、同社に対し、安全管理業務手順を改めるとともに、全社員への教育を求めた。再発防止策を踏まえ、今後1か月以内に是正措置、再発防止策にかかわる改善計画を策定して、提出することも求めた。同社の梅田一郎代表取締役社長は、「事態を重く受け止めており、多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げる。患者さんの安全を何よりも最優先に考え、関連法令の徹底遵守のみならず、社員に対する関連規則、業務手順の再教育を通じて、継続して製品の安全性と有効性を監視していく所存」と、再発防止に取り組む姿勢を示した。
違反事項とされたのは、①報告義務の対象となる212例の副作用を把握していたにもかかわらず、定められた期限内に報告しなかった、②安全管理情報を適切に収集する義務を安全管理責任者または安全管理実施責任者が果たしていなかった—の2点。
処分内容としては、安全管理業務手順書を改めることと、適切な副作用報告業務が実施できるように全社員に対する教育訓練を行うことを求めた。安全管理手順書は、▽MRだけでなく全社員に対し、医療関係者からの自発的、積極的な報告以外で知りえたすべての副作用について安全管理統括部門に報告する、▽安全管理実施責任者の業務として副作用報告を適切に実施していることを確認、その記録を保存する−−ことの明記を求めた。また、本社の業務手順書を参照しなければ具体的な内容が把握できない箇所は、参照ではなく具体的に書き下すなどの見直しも求めた。
◎営業報告の中から自主点検で発覚
報告義務の対象とされた副作用212例は、スーテント145例、インライタ26例、トーリセル23例、トビエース5例、リウマトレックス4例、ザイボックス3例、エンブレル2例、ザーコリ2例、ブイフェンド2例、プロジフ1例、リリカ1例。期間は2008年10月~14年10月までで、長いもので約7年間報告されていなかったことになる。
副作用遅延は、2014年10月に実施された同社の自主点検の一環で発覚。メモやEXCEL、システムを含めすべての営業記録を点検する中で見つかった。2015年2月に同社は、厚労省にオンコロジー領域について副作用報告が適切になされていない可能性を報告、2〜3月に医療機関での調査を実施し、重篤性や因果関係などの判断を含め、4月8日までにPMDAに報告した。ほかの領域にも調査を拡大し、前者で確認作業を実施。5月28日までに結果をPMDAに報告したとしている。
◎厚労省調査 自主点検で副作用遅延5社、46症例 講演会資料やコールセンター情報が落とし穴に
厚労省は同日、第1種製造販売業者272社(回答:271社、1社は自主廃業)を対象に、製造販売後安全管理業務に関わる社内体制について自主点検の実施を求めた結果も公表した。未報告の副作用情報があったのは、5社、46症例(69件)。▽ブリストル・マイヤーズ30例(42件)、▽藤本製薬6例(6件)、▽セルジーン5例(6件)、▽ヤンセンファーマ4例(14件)、▽武田薬品1例(1件)−−。主な原因としては、医療関係者から入手した講演会資料等に記載されていたケースや、コールセンターに寄せられた患者情報に含まれていたケース、MRが自ら入手した副作用を報告不要と誤って判断したケースがあったとした。
社内体制では、業務手順書に不備が見つかった企業が20社あったが、副作用に関する教育や定期的な自己点検の実施状況に不備のあった企業はみられなかった。