経済財政諮問会議 GE使用目標値80~90%に引上げ スイッチOTC類似薬は保険収載から除外
公開日時 2015/05/20 03:50
政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)の民間議員は5月19日、経済再生と財政健全化を両立させる新たな社会保障政策として、保険収載範囲の見直しや、毎年薬価改定、データ分析に基づいた医療費適正化などを盛り込んだ歳出改革の論点整理・各論を提示した。2020年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化達成を目指す。医薬品関連では、ジェネリック医薬品(GE)の数量シェアを米国や独国並の80~90%に引上げるとともに、2018年度から保険償還額をGEの価格に基づく設定とすることも検討する。スイッチOTCが認められた医療用医薬品を含む市販類似薬は保険収載から除外することも盛り込まれた。
◎リアルデータ活用で“見える化” 医療費、病床機能適正化へ
提示された改革項目のポイントは、診療情報などのリアルデータ分析に基づいて、“見える化”をうながすことだ。都道府県ごとにベンチマークすることで、一人当たり医療費の適正化、病床機能の適正化を図る。具体的な手法としては、新たなKPIとして、病床数や平均在院日数、国保被保険者や後期高齢者の受療率や調剤費をおき、データを集積する。データを開示することで、各都道府県が策定する地域医療構想と、それに基づく地域医療計画の実効性を高める。こうした取り組みを通じ、医療費の地域間格差半減を目指す考えだ。都道府県は、医療提供体制と医療保険の両面から責任を果たすことになるが、都道府県の権限を強化することで、これまで進まなかった病床再編をうながし、病床の適正化、入院医療費の地域間格差是正を目指す。一方で、医療費適正化についての各地域の取り組み状況を中間段階の2018年度に国が評価。その結果を地方への補助金、交付金の配分に反映させる。これにより、都道府県の自主的な努力をうながす考えだ。
一人当たり医療費は、最も支出額の少ない千葉県との格差を半減すると仮定した場合、医療給付費は2兆1600億円の削減が見込まれる。一方、後発医薬品利用率は、最も高率の沖縄県で66.5%、最低率の徳島県で42.4%だ。GEの目標値を80%に引き上げるとともに、格差を半減することで、医療給付費を7000億円程度軽減することが可能になる。
外来医療費についても、同様にデータ分析により、標準外来医療費を算出。この結果を医療費適正化計画に反映することで、頻回受診や過剰投薬などを排除する仕組みを構築する考えだ。疾病予防や健康増進などに努力した個人へのヘルスケアポイントの付与、受診回数に応じた保険料の傾斜設定が可能になる仕組みを導入し、適切な受療行動も支援する。また、効果的な投薬・残薬管理の実現に向けて、医薬分業も効率的な仕組みに改革することも打ち出した。
そのほか、高額療養費制度や後期高齢者の窓口負担については、年齢ではなく所得や資産などの経済力に基づいた仕組みへの転換を図る。介護保険の自己負担上限や2割負担対象者の範囲についても見直す。
◎生活習慣病などで事前評価早期の本格導入
医薬品関連では、生活習慣病治療薬などによる薬剤費の伸び率が大きいことを踏まえ、保険収載ルール、保険適用範囲を、費用対効果を加味し、エビデンスに基づいて見直す必要性を指摘した。収載時の事前評価に加え、すでに保険収載されている医薬品についても、本格導入を検討する。そのため、中医協の費用対効果評価専門部会の機能拡充・強化も求めた。また、薬価については、医薬品の取引慣行の改善を進め、市場実勢を踏まえた毎年薬価改定を検討する。
診療報酬については、高度急性期病床や療養病床が過剰な背景に、収益の高さがあると指摘。「診療報酬体系を2016年度から大胆に見直す」とした。過年度のデフレ分について段階的なマイナス調整を次回以降の改定で反映させるとした。また、個別サービスについても適切な原価算定を基本として、需給動向も踏まえた価格の妥当性を事後検証し、適正化を図るとした。
◎塩崎厚労大臣「GEはイノベーション推進策とパッケージで」
これに対し、塩崎恭久厚生労働大臣は、新たな社会保障政策の方向性について、すでに示してきた社会保障・税一体改革に、2020年度の基礎的財政収支の黒字化目標達成、20年後を見据えたビジョンと課題解決に向けた取り組みを加えた3本柱だとした。
GEの数量シェアについては、「現在の進捗状況を踏まえ、新たな目標を設定すべき。成長戦略の実現に向けたイノベーションの推進策も必要。両者をパッケージで提案したい」と述べた。