国内製薬トップ年頭所感 15年を成長軌道への転換点に 組織/意識の改革や新薬価値最大化で
公開日時 2015/01/07 03:51
国内製薬企業の経営トップの年頭所感が1月6日までに発表され、大手・準大手では、前年に日本市場でみられたジェネリックの急速な市場浸透など様々な環境変化に対応し、将来にわたっての成長を実現するため、15年を成長軌道の第一歩にするとの決意を表明する内容が目立った。成長のために、組織体制の見直しや社員の意識改革を進めるとともに、新薬の上市成功や価値最大化に取り組むとしている。
【武田薬品】クリストフ・ウェバー社長は、14年に掲げた「Our Transformation(変革)」との目標や戦略に全社一丸となって取り組むとしたうえで、日本市場について、「15年は当社日本事業にとって特別な年になることを強調したい」とした。タケプロン後継品の消化性潰瘍薬タケキャブ、週1回のDPP-4阻害薬トレラグリプチン(一般名)、インフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチンといった「極めて重要な新薬の上市を予定している」(ウェバー社長)ためだ。そして、これらの新薬上市を成功させるなどして、「日本の製薬企業としてのNo.1ポジションを堅持していくことが非常に大切」との認識を示した。
長谷川閑史会長は、医師主導臨床研究「CASE-J」の問題に触れ、コンプライアンスのさらなる徹底や、タケダイズムに則り誠心誠意、日々の活動に取り組むことに、「私とウェバーが協力してその先頭に立ち、力を尽くす所存だ」と決意を表明した。
【アステラス製薬】畑中好彦社長は、今年10周年を迎えるアステラスが持続成長するためには、「変化し続けること」が重要との認識を示すとともに、社員一人ひとりに対して、日々アンテナを高くして感度を高め、パッションとオーナーシップを持って新たな価値を創造してもらいたいと呼びかけた。また、アステラスの目指すべき姿を示した新しいVISIONや、これを実現するための中期経営計画を現在策定していると説明した。
【第一三共】中山讓治社長は、14年の大きな決断として、ジェネリック事業を展開するインド子会社ランバクシーのグループ外化と、日本の第一三共グループ全体にわたる組織・運営体制の大幅見直しを挙げた。ランバクシーはインドのサンファーマと合併するが、この合併後に、新薬とジェネリックを両輪とするハイブリッドビジネスモデルのあり方を含めて「経営計画を見直す予定」とした。
15年もグローバルレベルでの競争力を強化していくため、「環境の変化を先取りし、課題を的確に認識することにより、次なる打ち手を真剣に考えていくことが必要」と指摘。社員に対して、▽市場競争に勝つ▽スピードアップ▽活きた金・活きた時間を使う▽考え抜く――ということを改めて意識するよう求め、「15年が第一三共グループにとって飛躍へのターニングポイントの年だったと思えるよう、全社一丸となって挑戦していこう」と呼びかけた。
【エーザイ】内藤晴夫社長は、「(15年は)成長軌道への回帰を果たす一年とする」と決意表明した。抗がん剤ハラヴェンなどのグローバル製品の育成と、国内医薬品事業のリバイバルで成長回帰させる考え。特に、「認知症領域における当社への期待に応えるべく、新薬創出の加速、アリセプトによるレビー小体型認知症を含めた認知症への包括的な貢献を果たしていく」とし、アリセプトをはじめとする認知症領域での取り組みが成長のカギになるとの認識を示した。
【田辺三菱製薬】三津家正之社長は、14年は薬価改定やジェネリックによる長期収載品の想定以上の売上減などがあって、「国内市場は急速に変化し、新薬メーカーはこの影響を大きく受けた」と振り返った。この市場動向は今後も変わらないとしたものの、このような市場環境でも「新薬メーカーとしては、患者さんや先生方のニーズに応えられる価値ある新薬を継続的に上市することが必須」との認識を示した。社長就任時から取り組んでいる「独自の価値を一番乗りでお届けする、スピード感のある創薬企業」への変革をめざし、▽研究開発▽国内営業▽組織・行動▽米国展開――の4つの変革を着実に進めていくとの決意も表明した。
【大日本住友製薬】多田正世社長は、「合併10周年を迎える15年は、『転換・反転・好回転』の3つの『転』の年にしたい」と表明した。「転換」は、今後5年間は事業構造の転換がテーマになるとし、特徴ある多くの新製品を国内外で上市し、20年にはこれら新製品が同社を支える「新しい大日本住友製薬」に変身させるとしている。「反転」は、国内の降圧配合剤アイミクスや北米での統合失調症薬ラツーダを中心に業績向上に取り組み、ジェネリックの影響を大きく受けた14年度業績からの「反転」を目指す。「好回転」は、「前向きに回転していく年」を意味し、人材育成や公正な評価制度の定着などで、業績向上と職場のモチベーションがより高まるようにする。
また、多田社長は社員に対して、「本年を『転機元年』と位置づけ、会社が目指すベクトルに合わせ、正しいと考えていることを迷わず実行できる人材に成長いただきたい」と求めた。
【塩野義製薬】手代木功社長は、社員に対して、「『自分の力でシオノギグループを世界の中で存在感も競争力もある創薬型製薬企業として発展させる』という決意を新たにしてもらいたい」と呼びかけた。このために、▽14年度にスタートした中期経営計画SGS2020の方向性に自信と誇りを持つこと▽従来の発想から抜け出し、果敢にビジネスイノベーションに挑戦すること▽グローバル競争において、成長にこだわり、勝ちにこだわるメンタリティを持ち続けること――の3つの実行を求めた。