中医協・薬価専門部会 ディオバン問題 医療保険財政への影響検討 不正時のルール化も視野
公開日時 2014/09/11 03:52
中医協薬価専門部会は9月10日、ARB・ディオバン(一般名:バルサルタン)の臨床研究不正について厚労省から事実関係の説明を受けた。同省は、データ不正があったとされるJIKEI Haert Study論文公表後のARB市場売上や市場占有率の推移などの資料を提出。その後の議論では、ディオバン問題による医療保険財政への影響などをめぐり各委員が発言した。診療側委員からは何らかのペナルティを考慮すべきとの意見もみられた。同問題をめぐっては誇大広告に関する薬事法違反でノバルティスの元社員が逮捕・起訴されているところ。ただ、医療保険財政への影響を各種データから明確化することも難しい。今後は不正時の対応に関するルール化なども議論の俎上にのぼりそうだ。
厚労省はこの日の薬価専門部会に、ディオバンを含むARB7品目の薬価や市場規模の推移、ARBとCa拮抗薬、ACE阻害薬などを比較した市場占有率の推移を示したデータを提示した。薬価については、外国平均価格調整や市場拡大再算定で引下げを受けた経緯をもつことから、ARBの中でも最低薬価で推移している。そのため、委員からは「薬価については、少なくとも論文の影響を受けたということは見受けられない」との声も聞かれた。
売上伸長の要因については、論文を用いた他剤との差別化のみではなく、有効性・安全性や営業力、卸との連携など複合的な要因がある。そのため、論文の改ざんの同剤の売上伸長への影響のみを抽出することは難しい。
一方、ディオバンの市場占有率をみると、東京慈恵会医科大学などで実施された「JIKEI HEART Study」が医学誌LANCETに公表された2007年4月以降、競合薬でそれまでトップシェアを維持してきたブロプレス(カンデサルタン)の売上に迫っている。また、その他の競合薬であるミカルディス(テルミサルタン)やオルメテック(オルメサルタン)はディオバンと同様、売上が伸長していた。
こうしたデータに診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「販売量や財政影響があるか否かを判断するには客観的な根拠が不足している。今日の時点で評価するのは非常に難しいのではないか」と指摘した。
一方で、「不愉快かつ許しがたい案件。調剤した薬剤師と患者さんとの信頼関係を損ねかねない問題」(安部好弘委員・日本薬剤師会常務理事)、「臨床現場では、患者さんに不安と失望を与えた。メーカーの責任は極めて重大」(中川俊男委員・ 日本医師会副会長)など、ディオバン問題が臨床現場に与えた問題の大きさを指摘する声があがった。診療側の中川委員からは、「中医協でどういう“ペナルティ”を与えるのか与えないのか、医療保険財政上どのようにすべきか」と問う場面もみられた。