ノバルティス MRらが4医師主導臨床研究でも不適切な関与
公開日時 2014/05/21 03:50
ノバルティスファーマは慢性骨髄性白血病治療薬・タシグナ(一般名:ニロチニブ)の臨床研究にMRなどの不適切な関与があった問題で、ほかの4つの医師主導臨床研究でも、不適切な関与があったことを明らかにした。MRらが臨床データにアクセスする機会も含まれていたが、いずれの研究でもデータの改ざんを示す証拠は見つからなかった。調査ではまた、重篤と判定される可能性のある副作用発現例が2例あることもわかった。同社は、すでに厚労省報告をしており、今後も詳細な調査を行っていくとしている。
調査は、東大医学部附属病院に研究事務局を置く研究グループTokyo CML Conference(TCC)が実施した2研究、東京医科大医学部附属病院に事務局を置くTokyo STI study Group (TSSG) が実施した2研究を対象に実施された。研究はグリベック(一般名:イマチニブ)をめぐる研究が3研究、タシグナが1研究。
社外調査報告書では、▽研究計画書、患者登録フォーム、アンケート用紙、通信文書など研究で使用される文書の下書き作成、▽データシートおよび中間報告のプレゼンテーション資料の作成、▽研究参加施設からの依頼に基づいた記入済アンケート用紙の研究事務局への運搬、▽治療中の患者の来院情報のリマインダー―などに社員がかかわっていたと指摘した。ただし、データ改ざんと疑う事情は認められず、「研究結果が不当に歪められたとは認められなかった」とした。
◎観察研究の費用 奨学寄附金で賄う
研究の中には、東京医科大学医学部附属病院を中心に現在進行中の多施設共同観察研究も含まれている。同研究は当初、他の観察研究の検査データを流用していたが、登録期間の延長などから新たな検査費用が必要となった。この状況を受け、東日本営業部長やブロックマネージャーなど社員10人で会議を開催。奨学寄附金を用いることでこの検査費用を賄うことが可能だと結論付けた。この結論を受け、MRが検査に必要なコストを1300万9500円と試算、支払方法は「病院への一括が望ましい」などと記載した資料を作成している。この資料に基づき、試験に携わった医師が研究グループの会議で報告を行っていることもわかった。報告書ではこれらの事実に基づき、「奨学寄附金の一部が研究の費用に充てられた可能性は高い」と指摘している。ただし、プロトコルでは費用が研究グループ事務局から支払われ、「資金は寄付金によって賄われている」と記載されており、整合性も問題視される。なお、奨学寄附金は研究グループの代表者である医師に2012年分1100万円、検査費が懸案となった2013年分は900万円という。
同研究では、研究中に同社のメディカル部門の医師主導臨床研究への関与が限定的とするよう会社の方針が変更となった。そのため、メディカル部門の学術担当社員などが研究への関与を拒否するようになったと説明。その結果として、同院を担当するMRが過去の類似の臨床研究の資料を参照し、コンセプトシートの原案作成、連絡文著案の作成などに関与したと報告書では指摘した。このMRはその後、IRB申請書類作成の代行、研究データベースの作成も行った。また、血液内科医局秘書から症例登録書のコピーをとり、現在まで保管していた。これにより把握した情報を担当MRに連絡するとともに、グラフや一覧表としてブロックマネージャーへの進捗報告やMRへの次回検査日のリマインドなどを行っていたとした。なお、2013年11月に同社ではMRの医師主導臨床研究への関与が全面的に禁止となったことから、それ以降社員は同研究に関与していないという。