IMSジャパンは2月20日、2013年1~12月の国内医療用医薬品市場の動向を発表した。医療用医薬品の売上(薬価ベース)は計9兆8466億4100万円、前年比3.1%増で、抗腫瘍薬、糖尿病治療薬、抗血栓症薬、リウマチなどに用いる免疫抑制剤が市場全体をけん引した。
市場別にみると、100床以上の病院市場が3兆8717億6900万円(前年比2.8%増)、99床以下の開業医市場が2兆2173億3100万円(1.0%減)、薬局その他が3兆7575億4000万円(6.1%増)――だった。薬価改定年ではないにもかかわらず、開業医市場は2年連続で前年を下回った。
上位10薬効の顔ぶれは前年と変わらない。トップは抗腫瘍薬で売上6968億7400万円(6.6%増)。アバスチン、ハーセプチン、ベルケイド、スプリセル、アービタックス、タシグナなどの分子標的薬が抗腫瘍薬市場をけん引した。2位はレニン-アンジオテンシン系作用薬で6431億2200万円(0.7%増)と横ばいで推移した。
2ケタ成長した薬効は糖尿病治療薬と免疫抑制薬の2薬効ある。糖尿病治療薬は4613億5700万円(10.5%増)で、ジャヌビア/グラクティブをはじめとするDPP-4阻害薬の成長が主な要因。薬効別の順位は3位で、前年の4位からひとつ上げた。免疫抑制薬は3275億9900万円(13.2%増)で、レミケード、ヒュミラなどの抗リウマチ薬や、多発性骨髄腫治療薬レブラミドの成長が主因となっている。順位は前年10位から2つ上げて8位になった。
これら2薬効に次いで伸び率が高かったは抗血栓症薬となる。売上は4103億3900万円(9.1%増)で、抗血栓症薬プラビックスのほか、抗凝固薬プラザキサや同イグザレルトといった新薬の成長が主因となっている。プラビックスは売上1167億9900万円(14.3%増)で、製品別売上で首位に立った。
◎ディオバン12.9%減 月追うごとに減収幅拡大
製品別売上をみると、トップの抗血栓症薬プラビックスに次ぐ2位が、前年首位のARBブロプレスで1054億9700万円、8.2%減。3位は医師主導臨床研究問題があったARBディオバンで、売上943億500万円、12.9%減だった。
ARB単剤の多くが配合剤への切替を中心に減収となっており、ブロプレスはこれに加えて、後継品の新規ARBアジルバへのシフトもある。その一方で、ディオバンは製品売上上位10製品の中で最も減収幅が大きかった。さらにディオバンでは、13年第2四半期(4~6月)が前年比5.0%減だったものの、第3四半期(7~9月)は15.7%減、この日公表された第4四半期(10~12月)は22.0%減と、月を追うごとに減収幅が拡大している。臨床研究問題が進展するにつれて売上への影響が拡大していると分析できそうだ。
なお、売上上位10製品の中で伸び率が高かった製品はプラビックス、抗腫瘍薬アバスチン(901億2600万円、13.6%増)、DPP-4阻害薬ジャヌビア(827億300万円、11.2%増)で、これら3製品のみ2ケタ成長した。
◎第一三共、ファイザー、イーライリリー、ヤンセンが2ケタ成長
企業別の売上ランキングを見てみる。医薬品卸に製品を販売し、その代金を回収する機能を持つ「販売会社」ベースでは、上位5社の顔ぶれは変わらず、トップから武田薬品(7048億7800万円、1.1%減)、アステラス製薬(6534億6100万円、1.1%増)、第一三共(5739億4500万円、11.2%増)、田辺三菱製薬(4082億7500万円、0.3%増)、中外製薬(3980億8500万円、0.2%減)――となった。このうち2ケタ成長した第一三共はARBオルメテック、PPIネキシウム、認知症用薬メマリーなど主力品の売上増が企業業績をけん引した。
上位20社中で第一三共のほかに2ケタ成長したのは、8位のファイザー(3856億2300万円、14.8%増)、14位の日本イーライリリー(2135億1700万円、15.4%増)、20位のヤンセンファーマ(1430億7400万円、18.8%増)――となる。ファイザーは疼痛用薬リリカ、骨粗鬆症治療薬ビビアント、抗がん剤など、リリーは抗精神病薬ジプレキサや骨粗鬆症治療薬フォルテオなど、ヤンセンは疼痛用薬トラムセットなどが好調だった。
市場全体の成長率3.1%を超えた企業は、これら2ケタ成長した4社のほかに、抗精神病薬エビリファイなどが好調だった大塚製薬(2916億3300万円、6.5%増)と、イグザレルト、脂質異常症治療薬ゼチーア、高リン血症治療薬ホスレノールなどが好調だったバイエル薬品(2042億2100万円、7.6%増)――の計6社となる。
販促会社が2社以上の場合、製造承認を持っているなどオリジネーターにより近い企業に売上を計上する「販促会社」ベースで企業ランキングを見てみる。トップから7位までの順位は前年と変わらず、トップからファイザー(5918億7200万円、3.3%増)、武田薬品(5424億8800万円、2.8%増)、第一三共(4803億7600万円、2.3%増)、MSD(4013億9900万円、1.4%減)、中外製薬(3997億6500万円、0.3%減)――となった。
以下の「関連ファイル」に医薬品市場全体、上位10薬効、売上上位10製品などの資料を掲載しました