PhRMA会員企業 215剤の心血管疾患治療薬を開発中
公開日時 2013/06/27 05:00
米国研究製薬工業協会(PhRMA)の会員企業が現在、開発している心不全、脳卒中など心血管疾患治療薬が合計215剤に上ることが分かった。PhRMAが6月12日発表した「開発中の新薬:心疾患と脳卒中」(Medcines in Development: Heart Disease and Stroke)と題する報告書で明らかになった。
AHA(米国心臓協会)によると、米国では、39秒ごとに1人が心血管疾患で死亡しており、少なくとも8300万人がいずれかの心血管疾患が原因で死亡している。しかし、心血管疾患治療薬の貢献により、心臓病や脳卒中を原因とした死亡数は減少傾向にあり、米国疾病予防管理センター(CDC)によると、2001年から2011年の間で、心疾患による死亡数は3分の1に減少したという。CDCはこの傾向について、リスクファクターの管理の改善、早期発見、新薬や効能拡大など治療法の改善が寄与しているとみている。
PhRMAのJohn Castellani理事長兼CEOは、「血圧管理や脂質低下を行う安全かつ有効な医薬品は心臓病による死亡を有意に減少させることに役立っている」と指摘したうえで、「(PhARMA会員企業の)R&Dパイプラインにおけう心血管疾患治療薬は、米国の研究指向型バイオ・医薬品企業が今日までの科学の進歩の上に築き上げ、患者を長寿や健康な生活に導くような関与を行ってきたことを反映している」と説明している。
215剤の薬効別内訳は、心不全が最多の30剤、次いで脂質異常症29剤、脳卒中19剤、高血圧および虚血性疾患17剤、末梢血管疾患15剤、肺血管疾患12剤、血栓13剤、急性冠症候群、心臓発作および動脈硬化症が12剤などと続いている。
これら薬剤のなかには、新規技術を応用したものとして、患者の幹細胞を活用した虚血性心不全幹細胞療法、HDLコレステロールからLDLコレステロールに変換させる役割を担うタンパクを選択的に阻害する薬剤、Desmodus rotundus(ナミチスイコウモリ)という吸血コウモリの唾液由来の血栓溶解剤である虚血性脳卒中治療薬などが控えている。
◎社会的コスト軽減への貢献も強調
同報告書では、画期的心血管疾患治療薬が、患者のヘルス面ばかりでなく、社会的コストを軽減に貢献するとの観点も強調している。
その一例として、医療経済誌「Health Affairs」における、臨床ガイドラインに従って、高血圧患者を治療することで、脳卒中および心臓発作を減少させ、89000人の死亡と420000人の入院を回避させ、結局、年間で156億ドルを削減させるというデータを紹介した。
また、米国心臓協会(AHA)のデータも引用、AHAは、うっ血性心不全の医療費は高齢化の進展に伴う罹患率の上昇により、今後20年で2倍になると予測している。心不全患者数は2012年の500万人から2030年には800万人に上ると見込まれるため、心不全の直接的および間接的コストは、2012年の310億ドルから2030年には700億ドルに達するとみている。
しかし、医療経済誌「米国マネージドケア雑誌」(The American Journal of Managed Care)に掲載された研究論文(PhRMAが支援)では、心血管疾患治療薬に限定したことではないが、薬剤に対するアドヒアランスを改善することで、公的高齢者保険メディケアでは、毎年19億ドルの薬剤費が節減でき、10年では224億ドルの節減になるとのデータが示された。
PhRMAは、この研究ばかりでなく、多くの研究で、薬剤の適正使用とアドヒアランス向上が、医療サービス費用を減少させるのに重要な役割を果たしていることを示されていると指摘している。