【ASCO速報】STAMPEDE 去勢抵抗性前立腺がん患者 転移巣別では骨+軟部組織への転移例で予後不良
公開日時 2013/06/03 06:00
ドセタキセルや新たに開発中の薬剤が使用できるようになった現在でも、去勢抵抗性前立腺がん患者の予後は、期待したほど良好ではないことが明らかになった。前立腺がんの臨床試験として最大規模のSTAMPEDE試験に登録され、アンドロゲン除去療法(ADT)群に割付けられた新規診断の転移性(M1)疾患患者の解析結果から示された。5月31日~6月4日まで米国・シカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)のポスターディスカッションセッションで1日、英国The Christie NHS Foundation TrustのNoel W Clarke氏らが報告した。
試験は、進行前立腺がん(新規診断あるいは急速に再発した転移性(M1)前立腺がん、または高リスク局所進行前立腺がん)に対する一次治療として、ADTにドセタキセルをはじめとする治療法を併用する効果を検討した無作為化臨床試験。登録期間は、2005年10月~13年3月までで、3984例が登録されている。今回、Clarke氏らは、無作為化前6カ月以内に新規にM1疾患と確定診断され、対照(ADT単独2年以上)群に割り付けられた患者630例の成績を解析することによって、新規診断されたMI疾患患者の予後を検討した。
対象の無作為化時点における年齢は65歳(中央値)で、PSA値は108(中央値)IU/l、骨転移のみ(B)が425例(62%)、軟部組織(ST)への転移が83例(12%)、骨+軟部組織(B+ST)への転移が174例(26%)だった。内部組織への転移は主にリンパ節だった。診断から無作為化までの期間は68日(中央値、最長180日)で、無作為化前のADT期間は47日(中央値、最長105日)だった。
2014年4月のデータ固定時において、死亡は169例、このうち前立腺がんによる死亡は140例だった。無作為化からの全生存期間(OS)は41.5カ月(中央値、95%CI:36.0-45.4)で、2年生存率は71%(95%CI:66-75)。転移部位別では、Bで73%(95%CI:67-78)、STで87%(95%CI:72-94)、B+ST で57%(95%CI:46-67)だった。
無治療失敗生存(FFS:生化学的再燃、局所進行、リンパ節転移、遠隔転移、前立腺がん死)は11.8カ月(中央値、95%CI:10.8-13.3)で、2年FFSは31%(95%CI:26−35)。転移部位別ではBで31%(95%CI:25-37)、ST53%(95%CI :39-66)、B+ST18%(95%CI:11-27)だった。FFSイベントから死亡までの期間は20カ月(中央値)だった。
Clarke氏らは、「FFSは試験前の予想よりも短かかった一方で、OSは長く、診断後の期間の約70%は、FFS後だった。予後は転移部位によって異なり、リンパ節のみの転移の場合、骨のみへの転移と比較して予後良好であること、骨とリンパ節両方に転移している患者は、予後が不良であることが分かった」とした。またFFSイベント発生後の治療は医師の裁量に任されたが、明確なパターンは認められなかったという。
◎臨床試験データの集積が予後改善につながること期待
ディスカッサントのEvan Y. Yu氏(University of Washington/ Seattle Cancer Care Alliance)は、まず「この試験の対象期間は、ドセタキセルをはじめ、新たな薬剤を用いることができる時代であるにも関わらず、OSが約3年半(41.5カ月)と、予想したより短かったことに驚いた」と述べた。
その上で、OSの成績がADTで5.8年、ADT間歇療法で5.1年と、ともに5年を超えていたSWOG9346試験の成績を紹介。この違いの一因として、SWOG9346では、PSAが4未満を満たしていなかった約20%の患者は無作為化されず、試験から除外されており、選択された患者集団であったことを挙げた。STAMPEDE試験では、SWOG9346で無作為化が行われた時期にあたる6カ月の時点で、すでに30%がFFSイベントを経験しており、進行/去勢抵抗性前立腺がんだということができると説明。重要な点は、現在においてもなお、去勢抵抗性前立腺がん患者の予後は、期待したほど改善されていないことだとした。
また、SWOG9346で7カ月時点のPSA別に層別化したrPFSがPSA≤0.2 で 75カ月、0.2<PSA≤4.0で 44カ月、PSA≥4.0 で 13カ月(P<0.0001)であることが報告されているが、これら患者について、転移部位別に検討することで、本試験で示されたB+STがもっとも予後不良であることが、検証されていくのではないかと、試験データの集積によって、予後の予測、ひいてはより適切な治療が可能となり、患者予後改善につながることに期待を寄せた。