ノバルティス ディオバン医師主導臨床研究 元社員の関与認める 「不適切だった」 データ改ざんは不明
公開日時 2013/05/24 05:01
ノバルティスファーマは5月22日、ARBディオバン(一般名:バルサルタン)の5つの医師主導臨床研究に同社の元社員1人が関与していたこと、そして同社の社員であることを開示せずに論文に記載された点について、「不適切なものだった」とする調査内容を同社ホームページに同日付で掲載した。同社の社内調査を第三者の外部専門家が検証したもので、同社はこの調査結果を日本医学会、日本循環器学会、日本高血圧学会に提出した。第三者による外部専門家の検証は引き続き行われており、同社は、その結果に基づいて必要かつ適切な措置を講じるとしている。
問題となっているディオバンの医師主導臨床研究が実施された当時、元社員の管理者が、この元社員の関与を把握していたことも確認した。ただ、「元社員を関与させるという明確な戦略が当時あったとは特定できていない」と会社組織での関与は否定した。
元社員が問題となっているデータにどこまで関与したかについては「元社員がいくつかの研究でデータの解析にもかかわっていたことが判明した。これまでの調査で、意図的なデータの操作や改ざんに導いたことを示すものは判明していない」とし、データ改ざんの有無は判明していないとしている。
同社は、この問題について「きわめて重大なことと認識している」とのコメントを発表した。また、三谷宏幸社長(当時、現在は最高顧問)が2月の記者会見で、同社が医師主導臨床研究のデータ解析に関与することは不可能としていた点についても正式に撤回した。
元社員が関与した試験は、京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、千葉大学、名古屋大学、滋賀医科大学で行われた5試験で、いずれも医師主導臨床研究。そのうち京都府立医科大学で行われたKYOTO HEART studyの結果は、09年にEur Heart Jで論文発表されたが、13年4月に撤回されている。慈恵会医科大学が実施したJikei Heart studyは07年にLancetで発表され、12年4月に統計上の懸念が同誌内で指摘されていた。それら5つの臨床研究の内容はディオバンの販促資料として活用されてきたが、同薬の承認申請や追加適応取得には関係していない。
なお、24日に開催される日本医学会分科会の利益相反委員会では、この問題も取り上げられる予定。