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【ACC事後リポート】アンメットニーズ満たす新薬の登場に期待

公開日時 2013/04/08 23:00

新規抗血小板薬に求められる
効果発現のスピードと使いやすさ

「ベアメタルステント(BMS)の時代と比べても、急性期のステント血栓症の発生率はあまり減ってきてはいない」――。小倉記念病院循環器内科部長の横井宏佳氏はこう指摘する。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)周術期のステント血栓症の発生を防ぐためにも、抗血小板療法は重要視されてきた。現在標準療法とされる、アスピリンとクロピドグレルの併用療法の有効性の高さや、BMSから薬剤溶出性ステント(DES)の時代に入ったことで、待機的PCI施行例での治療成績は向上してきた。さらに、抗血小板療法の2剤併用の投与期間も短縮されてきた。
一方で、それでもステント血栓症の発生の大きな減少がみられず、依然アンメット・メディカルニーズが残るのが、緊急度の高い急性冠症候群(ACS)患者に緊急PCIを施行した際の、ステント血栓症の発生抑制だ。
これまで標準療法とされてきた、アスピリンとクロピドグレルの併用療法だが、クロピドグレルは効果発現までに6時間以上経過するとも指摘されている。さらに、クロピドグレルは、肝代謝酵素CYP2C19で代謝されるが、遺伝子多型が存在することが知られ、それにより、クロピドグレルが十分な効果が得られない(低反応性)症例があると報告されている。特に、日本人では低反応性の患者(poor metabolizer)が多いとも指摘されている。
このような現状を受け、血小板反応性に応じた個別化医療の有用性を検討する臨床試験も行われてきたが、十分な有効性を示すには至っていない。低反応性患者にクロピドグレルの倍量を投与した「GRAVITAS」では倍量投与の有効性を示すことはできなかった。さらに、アスピリン、クロピドグレルの反応性に応じて治療選択を変えた「ARCTIC」も、個別化医療の有効性を示すには至っていない。

◎プラスグレル、チカグレロルの登場にも期待

このような臨床試験の結果を踏まえ、血小板反応性によるバラツキの少ない薬剤の登場が望まれてきた。特にイベント発生率の高い急性期治療においては、バラツキの少なさとともに、効果発現の早い薬剤の登場が待ち望まれている。日本国内では、次世代の抗血小板薬として、プラスグレル、チカグレロルの2剤の開発が進んでおり、これらのアンメット・メディカルニーズを満たす薬剤として期待を集めている。
3月15~17日の日程で開催された第77回日本循環器学会学術集会では、新規抗血小板薬・プラスグレルの日本人を対象とした臨床第3相試験「PRASFIT-ACS」の結果も報告された。試験結果からは、PCI施行予定のACS患者において、アスピリン併用下で、クロピドグレルを上回る心血管イベントの発生抑制効果を示す一方で、出血リスクが増加させないことも報告された。
また、国内では、効果発現が迅速で、可逆性であることを特徴とするチカグレロルも臨床試験も進行中という。
しかし、これら2剤がすでに臨床現場で用いられている海外でも、アンメット・メディカルニーズは残っていると指摘されている。
これらの薬剤はすべて経口薬であるため、経口摂取に問題がある患者や、挿管をされている患者など、特に急性期の症例に対して、投与が難しいという。そのため、静注で、早期の効果発現が期待できるカングレロルに注目が集まったというわけだ。会場でも、日本の医師からカングレロルへの期待の声が多く聞かれた。残されたアンメット・メディカルニーズとも言える急性期の抗血小板療法。多くの治療選択肢が早期に日本の臨床現場に登場することで、このアンメット・メディカルニーズを満たす治療戦略が確立することに期待したい。(望月 英梨)

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