【SABCSリポート】N-SAS BC03 日本人ホルモン感受性閉経後乳がん患者対象にアナストロゾールの長期安全性確認
公開日時 2012/12/19 04:00
ホルモン感受性閉経後乳がんの日本人患者において、タモキシフェンからアロマターゼ阻害剤(AI)のアナストロゾールへの切り替えの長期投与における安全性プロファイルが確認された。切り替え症例では、ほてりやおりものの発生率が低く、関節痛が多いなどの特徴があるものの、タモキシフェン長期投与との間に大きな差がみられないことが示された。補助療法として、アナストロゾールへの切り替えと、タモキシフェン継続投与の有効性・安全性を検討した臨床第3相無作為化オープンラベル試験「N-SAS BC03」の解析結果から分かった。12月5~8日まで米サンアントニオで開催中の第35回サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)のポスターセッションで12月6日、愛知県がんセンター中央病院副院長・乳腺科部長の岩田広治氏らの研究グループが発表した。
AIは、閉経後のホルモン感受性乳がん患者において、標準的な補助療法となっている。そのため、治療継続期間は長期化する傾向にあり、長期の安全性データが重要視されている。一方で、アジア人を対象とした長期投与のエビデンスは十分に構築されているとは言い難いのが現状だ。
試験は、N-SAS BC03に登録された日本人のホルモン感受性閉経後乳がん患者を対象に、タモキシフェンからアナストロゾールの切り替え症例と、タモキシフェンの5年間継続投与の有害事象のプロファイルを比較検討することを目的に実施された。追跡期間は36カ月。
対象は、ステージI~IIIB、エストロゲン(ER)または/もしくはプロゲステロン(PR)陽性で、手術を受け、タモキシフェンによる補助療法を1~4年受けた患者706例。登録条件は、腋窩リンパ節転移の有無が確認され、ECOG-PSが0-1、無作為時に閉経しており、再発していないことなど。①タモキシフェン5年継続投与群(以下、TAM群)352例②タモキシフェンからアナストロゾールに切り替えた群(以下、ANA群)354例――の2群に無作為に割り付けた。
60歳以上の症例はTAM群180例、ANA群178例、HER2 0-2+はTAM群165例、ANA群166例、ER+PR+はTAM群250例、ANA群253例だった。ステージIはTAM群154例、ANA群153例だった。タモキシフェンの治療期間は、1~2年は、両群とも171例だった。すでに有効性と短期間の安全性については、報告されている。
有害事象の解析対象は、TAM群351例、ANA群345例。試験開始から12カ月まで3カ月毎、それ以降36カ月までは6カ月毎に、前向きにデータを収集し、比較した。
その結果、関節痛の発生率はTAM群がANA群と比べて有意に低かったが(p<0.0001)、ANA群でのこの関節痛の増加は無作為化から12カ月目までで、その後、両群間の差は時間経過を追うにつれ、小さくなり、36カ月目までに2群間のカーブは接近した。
一方、ほてりとおりものの発生率はANA群の方が有意に低く(ほてりp=0.001、おりものp<0.001)、両群間の差は無作為化から徐々に開いていき、ANA群の優位性が長期間継続した。
二次がんはTAM群10例、ANA群12例に発生し、2群間に差はみられなかった(p=0.6)。また対側乳がんはTAM群6例に対し、ANA群では3例の発生に留まり(p=0.3)、イベント数が少なく統計的検出力がなかったものの、ANA群で抑制される傾向が示された。
なお、肝機能の悪化(GOTおよびGPT)は、9カ月目まではTAM群で有意に低かったが(p=0.011)、12カ月目以降はANA群の方が有意に低いという(p=0.002)、興味深い結果が得られた。期間全体では両群間に有意差はなかった。
研究発表者の岩田氏は同試験の意義について、「タモキシフェンからアナストロゾールへ切り替える補助療法は、日本人のホルモン感受性閉経後乳がん患者においても標準治療の1つである」と述べた上で、「日本人症例を対象とした臨床試験において、アナストロゾールの長期的な安全性が確認されたことは、重要な意義がある」と強調した。