ファイザーのRA治療薬Xeljanz 経口のメリットあるも難点も
公開日時 2012/11/30 04:00
ファイザーの世界初のJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤である、関節リウマチ(RA)治療薬Xeljanz (トファシチニブ)が11月6日に米食品医薬品局(FDA)承認をユーザーフィー法における審査終了目標日よりも2週間早く、取得したが、同剤が経口剤で、TNF-α阻害剤で奏功しなかった患者へ投与ばかりでなく、RAに標準治療であるメトトレキサート(MTX)に対して十分に奏功しないか、忍容性がない患者への投与も可能となり、注射剤のみのTNF-α阻害剤に比べ、メリットが大きいように見える。
しかし、FDA諮問委員会は、同剤の安全性に懸念を持ったため、一層の安全性を評価するために、広範囲のモニタリングと臨床試験の実施を求めた。同剤のラベルでは、月1回の血液検査および3か月に1回の精密検査が求められている。
FDAが血液検査や臨床試験実施を求めた理由は、同剤が心血管イベントに関与するコレステロール値を上げる可能性があるため、長期的安全性を評価する必要があるからだ。同時にTNF-α阻害剤でも見られる副作用である日和見感染、結核などの重篤な感染症やがん、リンパ腫の増加を見るためでもある。試験結果は、2020年6月までに提出することが求められている。
しかし、リウマチ治療薬で日常診療でのモニタリングを求められているのは、ロシュのActemra (トシリズマブ)だけだ。
Xiljanzは、経口剤であることと幅広い適応を持っているが、医師が安全と確信を持つようになるまで、TNF-α阻害剤の治療が奏功しなかった場合の使用に限定される恐れもある。しかし、注射を好まない患者のとってはエキサイティングな大進歩といえる。
英市場調査・コンサルタント会社GlobalDataのアナリスト、Dina Rufo氏は、安全性の不確実さと市販後データがまだないことから、「Xiljanzの採用は、安全性プロファイルの観点からゆっくりしたものになる」と見ている。
今回、同剤のラベルには関節破壊の予防は含まれていない。ファイザーは関節破壊の予防をエンドポイントとして、MTXと比較する試験を行っていたが、今回の承認申請には間に合わなかった。この試験結果は、11月9日―14日の米国リウマチ学会(ACR)で発表されるが、7月に発表された中間データでは、関節破壊の予防はMTXに比べて良好だったという。
ファイザーは、この結果を次のラベルに掲載できるよう、出来るだけ早くFDAに提出する意向を示している。一方、同剤がもともとTNF-α阻害剤が奏功しなかった患者への投与を想定しているために、同剤の投与を始めようとする場合にはそのデータを掲載したラベルはさほど重要でないとの見方もある。
しかし、リピトールの特許が切れ、ブロックバスターを持つ必要性があるファイザーにとっては、同剤は重要な薬剤である。ファイザーは、同剤の適応について、RAに加え、乾癬、炎症性腸疾患を視野に入れている。米市場調査会社Bernsteinのアナリスト、Tim Anderson氏は、自らの同剤の売上25億ドルを控えめだと評している。
同剤の価格は、30日分で2055ドル、1年分24660ドル。この価格は、ほとんどのTNF-α阻害剤の価格26000ドルと同程度である。ファイザーは、同剤を11月末までには販売する予定。
The Pink Sheet 11月12日号