【ERS特別版】COPD患者の死亡リスク増加と、有意に関連する6分間歩行のMCIDを検討
公開日時 2012/09/07 06:01
慢性閉塞性肺疾患(COPD)において、6分間歩行(6MW)の距離が30メートル以上短縮すると、死亡リスクが有意に増加することがわかった。COPDの進行指標を3年間の追跡で検討した、ECLIPSE試験の解析結果から明らかになったもので、死亡に対する6MWテストの臨床的意義ある最小変化量(MCID)は、30mということになる。一方で、6MW距離の短縮と1秒量(FEV1)の変化、もしくはSt. George呼吸器質問票(SGRQ-C)の変化との関連性は僅かであった。9月1から5日までオーストリア・ウィーンで開催されている欧州呼吸器学会(ERS)のポスターセッションで、レイト・ブレイキング・アブストラクトとして取り上げられたもので、イギリス、Royal Brompton Hospital and Imperial CollegeのMI Polkey氏らの研究グループが2日報告した。
6MWはCOPD患者の運動能力を評価するために利用される。現在のMCIDの推定値は、限られたコホートを対象とした研究から得られたものであり、再検証が必要となっている
そこで研究グループは、多施設のコホートを対象としたECLIPSE試験のデータをもとに、6MWのMCIDを導き出すことにした。同試験ではCOPD患者2112例が対象で、各地域で可能な最善の医療ケアを受けていたが、試験的治療介入は行われなかった。
指標となるイベントを、急性増悪による死亡、または最初の入院と定義し、これらのイベントが発生する前の12カ月間で、どの程度6MWが変化していたかを測定した。また一般的な転機の基準であるFEV1とSGRQ-Cと、6MWの変化との関連性も調べた。
ベースラインと1年後の両時点で6MWが測定できた1847例のうち、2~3年目で死亡した被験者は94例、増悪関連で入院した症例は323例(最初の入院のみカウント)であった。ベースラインの患者特性を、死亡例と非死亡例、または入院例と非入院例とで比較すると、死亡例や入院例では年齢が有意に高く、気管拡張後%1秒量(%FEV1)が低く、6MW距離が短いなどの特徴があり、有意差が認められた。
分析の結果、6MWの距離は非死亡例で平均9.9メートル短くなっていたのに対し、死亡例で平均39.6メートル短縮しており、死亡例が非死亡例と比較して、有意に平均29.7メートル短縮していた(p<0.001)。Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、6MWが30メートル以上短縮した場合、死亡のハザード比は1.93(95% CI: 1.29 – 2.90、p=0.001)となった。入院例と非入院例とでは、6MWの短縮において有意差はなく、また6MWの短縮とFEV1の変化、またはSGRQ-Cの変化との間の相関関係は弱かった。
これらの結果から研究グループは、COPD患者において6MWの30メート以上の短縮が、死亡リスクの上昇と有意に関連していたとし、すなわち6MW検査の臨床的意義あるMCIDは30メートルであると結論した。