多発性硬化症治療薬イムセラ/ジレニアの添付文書改訂 海外の心臓障害による死亡等を受け
公開日時 2012/03/22 04:02
田辺三菱製薬とノバルティスファーマは3月21日、両社が昨年11月に国内で発売開始した多発性硬化症治療薬フィンゴリモド(製品名:イムセラ=田辺三菱製薬、ジレニア=ノバルティスファーマ)に関し、厚労省の通知を受け、添付文書を改訂したと発表した。昨年11月に米国で同剤を副作用した患者が死亡したことや、心臓障害(徐脈性不整脈)などの報告を受けての措置。米国、欧州は添付文書改訂に関して協議中の段階で、日本がそれらに先駆けての対応となった。改訂では、「警告」および「重要な基本的注意」に、初回投与時の心電図等のモニターに関する注意喚起のほか、投与初期は大きく心拍数が低下することがあるため、循環器の専門医と連携して投与を開始するよう追記した。
今回の改訂は、米国でノバルティスが発売するジレニアを服用し、投与24時間以内に心停止に至った症例、および投与21時間後に7.5秒間の心停止を発現し、その後自然治癒した症例(20代の男性)の報告にもとづき行われた(いずれもジレニアとの因果関係は不明)。死亡した患者は59歳の女性で10年間多発性硬化症を患っていた。
海外では欧州で11年3月、米国では10年に発売されたが、昨年末に海外で同剤の服用患者で31例の死亡が確認され、そのなかで欧州医薬品庁(EMA)が今年1月20日に循環器系の問題での死亡例が11例(溺死や睡眠中の原因不明の突然死などを含む)あったと報告した。ただし、日本国内では服用開始後24時間以内に循環器系の問題による死亡例の報告はないが、PMDAによると徐脈性不整脈関連症例が1例(因果関係が否定できない症例)が報告されている。
添付文書の改訂では、「警告」の欄に、「本剤の投与開始後、数日間にわたり心拍数の低下作用がみられる。特に投与初期は大きく心拍数が低下することがある」として「循環器を専門とする医師と連携するなど、適切な処置が行える管理下で投与を開始すること」と追記。また、「重要な基本的注意」の欄には、「初回投与前および初回投与6時間後に12誘導心電図を測定すること。また、初回投与後24時間は心拍数および血圧の測定に加え、連続的に心電図をモニターすることが望ましい」と追記し、注意喚起を行った。
ノバルティスファーマによると同剤の11年度の世界売上は2億300万ドル。また、田辺三菱製薬によると、国内では同剤発売後、両社あわせて120施設、350人の患者が全例調査の対象患者として登録されている。今回の改訂により、循環器専門医と連携できない施設には納入できないこととなるが、同社によると、現時点の納入施設で連携できない施設は含まれていないという。