【JCS2012特集】J-ROCKET AFサブ解析 中等度腎機能低下例でのリバーロキサバンの用量設定の妥当性示す
公開日時 2012/03/19 14:01
腎機能が中等度低下した、日本人非弁膜症性心房細動患者における第Xa因子阻害薬・リバーロキサバンの用量設定は、良好例(正常または軽度腎機能低下)よりも低用量である“10mg1日1回”が妥当であることが示された。日本人を対象に実施された臨床第3相試験(P3)「J-ROCKET AF」の腎機能別サブ解析の結果から分かった。福岡県福岡市の国際会議場などで3月16~18日まで開かれた、第76回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trialsセッションで3月18日、大阪府立成人病センター総長の堀正二氏が報告した。
J-ROCKET AFは、日本人非弁膜症性心房細動患者1280例を対象に、第Xa因子阻害薬・リバーロキサバンのワルファリンに対する安全性の非劣性を検証することを目的に、無作為割付二重盲検ダブルダミー試験として実施された。すでに報告された、本解析では、安全性主要評価項目(重大な出血事象+重大ではないが臨床的に問題となる出血事象)、有効性主要評価項目(脳卒中+全身性梗塞症)ともに、リバーロキサバンのワルファリンに対する非劣性が示されている。また、国際共同臨床第3相試験として実施された「ROCKET AF」よりも低用量の正常例15mg1日1回、腎機能低下例10mg1日1回だが、結果については一貫性を示している。
◎腎機能低下例 出血事象増加傾向示す
今回報告されたサブ解析は、中等度腎機能低下(クレアチニンクリアランス:30~49mL/min)の日本人非弁膜症性心房細動患者におけるリバーロキサバンの用量設定(10mg1日1回)の妥当性を検討することを目的に実施された。
対象は、中等度腎機能低下例(Clcr:30~49mL/min、リバーロキサバン群:141例、ワルファリン群:143例)、腎機能良好例(ClCr≧50mL/min:正常+軽度腎機能低下例、リバーロキサバン群:498例、ワルファリン群496例)。中等度腎機能低下例では、良好例と比べ、高齢、女性、低体重、CHADS2スコア高値などの傾向がみられた。
その結果、安全性主要評価項目(重大な出血事象+重大ではないが臨床的に問題となる出血事象)の発現率は、中等度腎機能低下例では、リバーロキサバン群27.8/100人・年、ワルファリン群22.8/100人・年で、ハザード比(HR)は1.22, [95%CI:0.78-1.91]、良好例でも、リバーロキサバン群は15.6/100人・年に対し、ワルファリン群14.8/100人・年(HR:1.07, [95% CI: 0.80-1.43])で、リバーロキサバン群でリスクが上昇する傾向がみられた。
腎機能別にみると、腎機能中等度低下例で発現率が高い傾向が認められたが、良好例との間で、有意な交互作用は認められなかった(p=0.628)。ワルファリン群に比べ、リバーロキサバン群で頭蓋内出血が少ない一方で、鼻出血や歯肉出血が多いなどの特徴は、腎機能にかかわらず一貫していた。
有効性主要評価項目(脳卒中または全身性塞栓症)の発現率は、腎機能低下例ではリバーロキサバン群2.8/100人・年、ワルファリン群3.3/100人・年、(HR:0.82,[95%CI 0.25-2.69])、良好例ではリバーロキサバン群0.9/100人・年、ワルファリン群2.4/100人・年(HR:0.36,[95% CI:0.14-0.93])だった。両剤ともに、腎機能低下例で発現率が高い傾向が認められたが、低下例と良好例との間で、有意な交互作用は認められなかった(p=0.279)。
堀氏は「中等度腎機能低下例は、正常または軽度腎機能低下例と比べて脳卒中および出血事象の発現率が高率だった」と指摘。その上で、サブ解析の結果から、安全性・有効性両面で「正常または軽度腎機能低下例と中等度腎機能低下例との間で有意な交互作用を認めなかった」と結果を総括。「中等度腎機能低下の日本人非弁膜症性心房細動患者におけるリバーロキサバンの用量設定(10mg1日1回)の妥当性が示された」と結論づけた。
コメンテーターとして登壇した心臓血管研究所附属病院の山下武志氏は、リバーロキサバンをはじめ、今後臨床現場に登場する第Xa因子阻害薬は、腎排泄の影響がダビガトランと比べて少ないことを説明。その上で、これまでの臨床試験結果から、腎機能低下例では、肝排泄のワルファリンも出血リスクが上昇するとのデータを提示。「現時点で機序は不明だが、腎排泄の寄与の程度にかかわらず、腎機能低下例では大出血頻度が上がることを、臨床家として知っておくべき」と、注意を促した。
そのほか、対象患者の90%がワルファリン投与歴を有する患者だったことや、同試験の有効性評価がPer-Protocol解析で行われている点について、ITT解析結果を加味することが必要であることなども指摘した。