薬食審分科会 エポジンの「がん化学療法に伴う貧血」 部会同様に「承認適切でない」
公開日時 2011/09/30 04:02
厚労省の薬食審薬事分科会は9月29日、中外製薬のエポジン注(一般名:エポエチンベータ(遺伝子組換え))の効能に「がん化学療法に伴う貧血」を追加することを審議し、6月13日の薬食審医薬品第二部会と同様に「承認することは適切でない」との結論をまとめた。得られるベネフィットに対して、エポジンなど赤血球造血因子製剤の投与によるがん患者の生命予後の悪化や腫瘍増殖の促進といったリスクの方が上回ると判断した。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)、第二部会、分科会のすべてで同様の結論が出たことになる。多くのケースで製薬企業は分科会まで至らずに申請取下げなどの措置をとるが、今回は「承認は適切でない」とされながら分科会まで審議した稀なケース。同省医薬食品局審査管理課は、「薬食審での結論を踏まえて今後対応することになる」としているが、同省は薬食審の結論を一般的には尊重している。事実上、現在の申請データでは承認できないということになりそうだ。
◎パブリックコメント 承認すべき7件 承認すべきでない2件
この日の分科会では、部会に提出された同じ資料のほか、広く意見募集(=パブリックコメント)した結果も踏まえて審議した。審査管理課によると、パブリックコメントでは9件の意見が寄せられ、部会の結論通り承認すべきでないとの主旨の意見が2件、承認すべきとの主旨の意見が7件――だった。しかし、承認すべきとの意見は「新たなエビデンスによる意見ではなかった」(審査管理課)という。パブリックコメントの多数決で承認を決めるという性質のものでもない。分科会としては審議の結果、総意を持って「部会の結論が妥当であり、承認は適切ではない」となった。
なお、分科会でも部会と同様に、投与対象患者をヘモグロビン濃度などで限定するなど特定の患者や特定の使用法であればリスクが回避できるのではないかとのやり取りもあったが、最終的には現在の情報やデータでははっきりとしたリスク低減が見出されないとの結論に至ったようだ。
今回の結果を受けて中外製薬は本誌に、今後の対応について、「今の時点ではコメントできない」としている。