為替に揺れる外資系
公開日時 2011/09/06 04:00
空前の円高に揺れる日本経済。外資系企業を中心に、転職市場にも確実にその余波はとどいてきている。
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もう十年ほど前になるだろうか、実力主義がもてはやされ、外資系企業が無条件にブランドと思われた時代があった。外資系企業で働いているというと、それだけでデキるビジネスパーソンと思われ、合コンでも日本の財閥系大手より人気があるくらいだったのだ。
いまは外資といっても多種多様。以前に比べ、規模がさほど大きくない中堅の外資系も多くなり、アメリカ・欧州だけでなく、アジアに本拠地を置く企業も目立ってきている。
ただ、ここ数か月、転職市場での外資系に活気はない。理由はご想像の通り、未曾有(みぞう)の円高にある。円の急騰により、売上という視点でみれば、日本市場はより重要度の高いマーケットになっているのだが、一方で人を雇うのはコストが高いと敬遠されているのだ。
外資系メディカルA社は求人を出しているが、なかなか人が集まらずに人事は浮かぬ顔をしている。人が集まらない主たる理由は単純、給与が低いことだ。
A社の給与は、日本全体でみればそれほど低いとも言えない水準なのだが、高給の部類に属している医療業界の他社と比較するとどうしても見劣りしてしまうのだ。
「うちの給与は、ドルがベースなんですよ。だから、地域手当のような補填をしても、どうしてもこれ以上は出せないんです…」
A社の人事はそうこぼしていた。いつレイオフになるか分からない分若いうちから高給という外資系のイメージも、円高の前ではカタなしというわけである。
もっとも、A社のように求人を出していればまだ良い方と言えるだろう。多くの外資系企業は日本での雇用を減らし、シンガポール・香港、あるいは中国・韓国のスタッフを強化することで、日本での売上を維持・向上できないかと検討中だ。
無論、円高は悪いことばかりではない。外資系企業B社勤務のTさん(31歳)は、大きな恩恵を受けた転職者だ。
一年前、Tさんは悩みに悩んでB社への入社を決断した。TさんがなかなかB社への転職を踏み切れなかったのは、B社の給与がインセンティブ、つまり営業実績に強くリンクしていたからだ。
「試算では、B社の平均程度の成績をあげれば、今と変わらない年収を確保できることになります」
「そうですか…。でも、一年目から平均の成績を出すのは簡単じゃないでしょうし、何かあったときに歩合制というのは…」
「では、断ってしまいますか?」
「いやいや、それはちょっと待って下さい。B社は雰囲気も良いし、製品力もあるし、これまでよりずっと積極的に仕事に取り組めると思うんです。ただ、今までがほとんど固定給だっただけに、すぐには踏み切れないというか…」
「Tさんの転職理由のひとつは、営業力があっても評価されない。コネや学歴で昇進が決まるということでしたよね?そういう意味では、願ったり叶ったりなのでは?」
「たしかに、それはそうなんですけど…」
こんなやりとりを一週間毎日一時間近く続けて、ようやく入社決断を下したTさんだが、給与の面は(少なくとも今年については)まったく問題にならなかった。
B社の給与算定の基準は、営業実績のドル換算でのランキング。日本法人に勤務するほとんどの人が上位に食い込み、大幅に給与増という結果になったのだ。
しかも、この方式に問題ありとなった為、来年以降は為替レートを考慮にいれた査定システムを導入するという。
「これで、仮に来年円安に振れても不利にはならないので、二重にラッキーでした」
Tさんはホクホク顔で我々に報告をしてきてくれた。
為替で経済は揺れる。転職市場も同様だ。問題なのは、為替は秒単位で変わっていくが、転職はその人の一生が掛かっているということ。目先の利益がどうでもいいとは言わないが、できれば自分のキャリアは長い目で選びたいものだ。
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