NICE MS治療薬フィンゴリモドを推奨せず ガイダンス案
公開日時 2011/08/17 04:00
英国立臨床評価研究所(NICE)は8月5日、ノバルティスの再発寛解型多発性硬化症(RRMS)治療薬Gilenya (フィンゴリモド)について、NHS(国民保健サービス)での使用を推奨しないとのガイダンス案を発表した。
NICEは推奨しない理由として、現在入手できるエビデンスでは、臨床的有効性に不確実性があるとし、NHSのリソースを使用するには、費用対効果が十分でないと指摘した。
臨床試験ではフィンゴリモドは非常に活動性の高いRRMS患者の一部の再発を減少させることが出来たが、インターフェロンβで治療していたにも関わらず1年で1回の再発を経験したRRMSの特定の患者グループおよび同治療にも関わらず1回以上の再発を経験した、障害を招くような重度のRRMS患者にはどの程度効果があるか不明確だと指摘した。ノバルティスUKが提出したエビデンスは主に前者のサブグループばかりを見ていたと指摘した。
このような観点から、評価を担当したNICEの独立委員会は既存治療法と比べて、フィンゴリモドがどの程度再発率を減少させたかを決定できなかったと説明。その理由として、ノバルティスはフィンゴリモドとプラセボとの比較データ、およびNHSでは広く使用されていないアボネックス(インターフェロンβ1a)との比較データのみを提出したためだと分析している。
独立委員会は、ノバルティスは活動性の高いRRMS患者に対してフィンゴリモドと他のインターフェロンβとの比較試験、また、急速に進行する重度のRRMS患者に対してフィンゴリモドとTysabri(ナタリズマブ)との比較試験を実施すべきだったと指摘する。
NICEは、NHSに対して、2007年以降、急速に進行する重度のRRMS患者については治療オプションとして、ナタリズマブの使用を推奨してきた。NICEヘルステクノロジー評価センターのCarole Longson教授は、「NICE独立委員会は、残念ながら、フィンゴリモドが既存の治療法よりMSの再発を有意に減少させるという十分なエビデンスを確認できなかった。入手できる臨床的エビデンスおよび経済分析に基づき、独立委員会は、フィンゴリモドはNHSのリソースを効果的に活用することにはならないと結論付けた」とコメント。
NICEは2011年8月26日までパブコメを募集、独立委員会を10月に開催、12月には最終ガイダンスをまとめる予定。