キャリアコンサルタントの独り言 第6回 「MR総数」を考える(上)
公開日時 2011/07/13 04:01
株式会社インテリジェンス
DODAキャリアコンサルタント/メディカルグループ マネジャー
堀 学
今回は「MR総数」の是非について考察したい。
昨今、MRの採用は実態として増加しているが、一方でMR総数5万5000人の是非について声が大きくなっている気がする。転職を支援するキャリアコンサルタントの立場として、常に考え続けるテーマであるが、「キャリアコンサルタントの独り言」の場をかりて、まずは現状を整理してみたいと思う。今回はその背景や理由についてまとめてみる。
◎MR機能の代替化
(1)情報技術の発達
インターネットの普及や、医師向け専門サイトの登場により、医師が知りたい情報(医学論文や医薬品に関するエビデンス)がオンタイムに、かつ比較的容易に収集ができるようになりつつある。このことで、MRから得られる情報の鮮度や有用性自体が低下し、医薬情報提供者としてのMR機能がネットに代替化されつつある。
(2)メディカルアフェアーズ(学術)部門の増強・メディカルサイエンスリエゾンの出現
欧米型へのシフトと呼んで良いかもしれないが、製薬企業によっては、適応外や承認外の文献情報等についてMRに所持させず、メディカルアフェアーズに文献情報提供の役割をDI業務の一環として担わせるという傾向にある。また、承認外の科学的データ収集を目的として、エビデンスの構築を目的に行われる際、メディカルサイエンスリエゾンという職種を新設し、サポートする製薬企業もある。
◎MRを取り巻く環境変化
(1)自主規制によるプロパー型営業への歯止め
メーカー公取協(医療用医薬品製造販売業公正取引協議会)によって、2012年4月以降の2次会の完全禁止、接待費の上限金額の設定が行われた。これによりMRによる従来のような接待活動に歯止めがかかると言われている。いわゆる旧来の接待・人間関係中心のプロパー型営業ができなくなり、実態としてかなりの割合を占めていると思われる、その営業スタイルを利用するMRの危機感は大きい。
(2)新薬メーカーの収益構造の変化
2010年問題による各社ブロックバスターの特許切れ、また新薬の上市が従来よりも鈍化傾向にある点、医療費抑制政策によるジェネリック医薬品の普及、薬価改定や診療報酬改定に伴う収益率の悪化等、新薬メーカーへの向かい風は強くなっている。
要因はその他多数あると考えるが、MR機能の代替化とMRを取り巻く環境の変化がMR総数の是非について議論に拍車を掛けていると思われる。次回以降では、もう一歩踏み込んで検証したい。