「男性」を見る目で
公開日時 2011/06/23 04:00
やり手の女性営業Kさんは、「男性」を選ぶように、企業選びをしていた…。
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転職エージェントは人をみる仕事である。数多く面談を重ねてくると、第一印象でかなりの部分を見抜くことが出来るようになるものだが、精密機器の専門商社で働くSさん(29歳)は、我々も驚くほど、最初の印象と実際の人柄がかけ離れた女性営業だった。
化粧っ気を抑えた童顔のSさんは、ひとめ、就活学生を思わせる容姿をしている。話してみると、根がまじめで頑張り屋という印象。目を惹く美女というわけではないのだが、ついつい応援したくなるタイプの女性だ。
しかし、これは余所行きの顔。Sさんの真骨頂は、営業ならではの、駆け引きの上手さにあった。技術的な知識が要求される製品を扱ってきたため、部署に女性は彼女一人だったのそうだが、男性営業に囲まれながら、Sさんは何度も社内表彰を受けていた。
特に新規開拓での実績が素晴らしく、社内でついたあだ名は「童顔の暗殺者」というのだから、その手練手管ぶりが分かろうというものだ。
そのSさん、担当が女性エージェントだったということもあったのかもしれない、我々にはいつも率直に話をしてくれた。彼女の会話にはいつも、男性を選ぶ目線が潜んでいた。応募先の企業についても…。
「良い会社って微妙ですよね。ほら、いい人って、結局、恋愛対象にならないじゃないですか。特徴はないけど、バランスの取れた良い会社もそれと同じなんですよ」
「ちょっと危ない感じのする会社ですよね。悪い意味じゃないんですよ。私、危険な香りのする男性って、嫌いじゃないですし」
「この会社は、出来たらキープしておきたいですよね。気を持たせて、デートに応じるまでの時間を上手に稼ぐみたいな感じで」
こうやってSさんに掛かると、どんな企業も男女の駆け引きに喩えられてしまうのである。ただ、会社を見る目はしっかりしており、彼女のレトリックは、我々が持っている企業像を、見事に言い表しているものばかりだった。
さて、このSさんがもっとも評価を得ることになったのが、地方に本社を置く、計測器メーカーA社の営業支社での求人だった。商社とメーカーの違いはあるが、扱う製品・営業先が同じで、Sさんの知識・人脈が十分いかせる企業である。
採用責任者である支社長は、社長の長男にあたるいわゆる二代目で、人を疑うことを知らない40歳だった。
「この分野の営業で女性って珍しいですよね。実績も素晴らしいし、我が社に新風を吹き込んでくれるものと信じています」
支社長の語るSさんは、彼女が顧客に見せる顔のことばかり。どう話を振ってみても、彼がSさんのもう一つの面に気づいている様子はなかった。
一方のSさんの方だが…。
「本社がこちらにないですし、一生いる会社じゃないかもしれませんが、働きやすそうな環境で気に入っています。内定がいただけたら、入社の方向で考えたいと思っています」
「ちょっと意外な気もしますね。A社の人達とSさんだと、だいぶタイプが違うように思ったので…」
「そうですね。でも、男性ばかりの職場には慣れてますし、平均年齢が高いのも気になりません。純粋なオジサマばかりの環境というのも、楽しそうじゃないですか?当面のキャリアアップも期待できますし。違いがあるほど相性が良いってこともあるんですよ」
その言い方から、我々には、SさんがA社を手の平の上でコロコロころがすイメージが出来ているように思えてならなかった。
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