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【解説】日本CSO協会の設立 サービスの質向上の推進力に

公開日時 2011/06/03 04:00

日本CSO協会が6月1日、主要9社の加盟により発足した。CSO関係者にとって業界団体の設立は悲願。そして関係者は、業界の発展に向け、CSOビジネスは新しいステージを迎え、そのスタート地点に立ったと認識している。さて、顧客側となる製薬企業にとって、どんなメリットがもたらされうるのだろうか。(酒田 浩)

CSOは「Contract Sales Organization」の略で、製薬企業(メーカー)の営業支援を様々な手法を用いてサービスする業態。例えば、新薬の上市に際し、より速い市場浸透を図る目的で、当該メーカーのMR以外の力、ノウハウを必要と判断した時に、派遣や請負契約に基づきコントラクトMR(CMR)を出動、メーカーのMRと協力してプロモーション活動を行う。

そのCSOが日本でビジネスとしての産声をあげて14年が経過した。10数社が展開し、10年度の市場規模は400億円程度(ミック経済研究所調査)。CMRは2375人(メーカーと契約のあるのは1760人)で全MRの4%(MR認定センター調査)。10~20数%という欧米に比べ低いが、年々増加しており、顧客であるメーカーの認知も一定程度得られてはきた。しかし、CSOが本来担うべき顧客サービスが定着したかというと、製薬業界の環境変化に対応するための課題は山積している。

一層高まるニーズ 今こそ足場固めの時

その環境の変化をみてみたい。メーカーでは、主力品の相次ぐ特許切れ問題(2010年問題)や研究開発費の確保を目的とした欧米メガファーマのM&Aなど、少なくともCSOビジネスが緒に就いた10年以上前とは大きく様変わりした。

特に、メーカーが取り組んでいる近年のマーケティング戦略は、ブロックバスター市場から、がん、難病などアンメットメディカルニーズ市場に軸足を移しつつある。新薬パイプラインの半分はスペシャリティ領域ともいわれる。となると、プロモーション戦略も、これまでのようなシェアオブボイス一辺倒から、スペシャリティー領域で医師と対等に話し込む、エビデンスベースのマーケティング戦略への変化が迫られ、メーカー側もその取り組みを加速させているが、課題がないわけではない。

一方で、政府による医療費抑制策も強まっており、コストの効率化を主眼に、薬剤部分に限っては後発品の使用促進に傾注しつつある。これによりメーカーにとっても、長期収載医薬品を含むエッセンシャル・ドラッグのプロモーションコストをいかに効率化するかが課題となってきた。

この環境変化の中にCSOの活躍する場が増えてくる可能性がある。新薬の上市に伴うプロモーション支援だけでなく、そして長期収載医薬品や後発品などの、いわゆるエスタブリッシュ市場もビジネスチャンスとして捉えられるようになってきた。事業環境に合う人材の育成、戦略コンサルティングもサービスの中に入ってくるだろう。実際、日本のCSO市場は当面2桁成長が可能との予測がある(ミック経済研究所調査)。ということは、今が、メーカーのニーズに応えていくため、業界全体でサービス品質の向上に向けて、足場を固める時であるといえ、協会設立の必要性は期が熟していたといえる。

知名度アップ、一層の信頼性確立が最優先課題

さてそこで、協会が設立された今、何が期待されるのか。課題としては▽業態の知名度アップと一層の信頼性向上▽教育研修の標準化▽CMRの職能・地位向上▽行政、関係業界との連携強化――があり、協会はその方向で取り組むことを1日、表明した。

具体的な活動内容は、会内に設けられた委員会で近く詰め、実行に移すことになるという。その結果得られるであろう成果は、94年に臨床開発受託機関の業界団体として設立された日本CRO協会の取り組みが参考になる。発足後いち早く「受託業務の適正実施自主ガイドライン」を制定する一方で、広報活動、関係業界との協議、教育研修機能の強化、関係業務のあり方の検討に取り組んできた。CROは新GCPに明記され、法的な位置づけを獲得するに至っている。

この中で「メーカー幹部でさえCSOを知らない人は少なくない」(複数のCSO業界関係者)との声がある以上、まずは「CSO」「CMR」の知名度アップ、その信頼性の一層の確立が最優先課題であると考えられる。

CSOの業態、役割をデータを以て広報することはもちろんだが、CSOという企業体としての信頼性(コンプラインアンス体制など)はどこまで確立されているのか、どんな付加価値をもたらすのか、CMRは企業MRとどう違い、その魅力は何なのか。知名度アップ、信頼性向上に取り組むことで、このように、業界の透明化、教育研修など他の課題にも当然取り組まざるを得なくなり、結果的にはサービスの質向上の推進力につながりうる。

優良人材獲得・育成の契機にも

何より、メーカー側が最も求める「よい人材の獲得」に応えられる可能性が広がる。CSO、CMRの魅力が広く伝われば、門を叩く人材も増えるだろう。それがサービスの中核である優良な人材の獲得につながるというわけだ。ただし、そのためにはメーカーMRにないCMRの職能、地位、魅力を向上させていく取り組みも必須となる。

本誌の調査によれば、現在のCMRはメーカーMRの欠員補充がメイン。CSOが提供できる付加価値をどこまでメーカーが認めているのか分からないところもある。そこで顧客であるメーカー側の日本製薬工業協会などと連携を深め、求められていることを協会として吸い上げ、応えていくことが期待される。時に、共同で事に当たることも必要になろう。

CRO協会は、CROの中核人材であるモニターについて業務実施レベルの均質化と業務実施水準の向上が狙いに教育研修制度を作った。その点、CSOのCMRは自社の製品にとどまらない、様々な広範囲の製品を扱える「プロ集団」としてポジションを得ることは可能であり、それを協会としてどう育成を支援していくのかが問われよう。

協会は、2015年にはCMR数5000人、アウトソーシング率8~10%と現在の倍以上に国内市場規模が形成されると見る。この増大するニーズに応えるには、業界としての一層の信頼性向上に取り組むことはもちろん、事業の中核人材であり、今後の成長を担うCMRのキャリアプランをどう描くのかは、この業界の魅力度につながる課題といえる。

医療の発展を視野に活動を

業界団体を設立することは、サービスの質向上、優良人材の獲得につながる可能性があり、メーカーとしても意義あることである。そして、協会が描く国内市場規模を医薬品業界の中で獲得していくということも含めて考えると、CSO業界は自分たちの業界の発展だけを考えていればよいというわけにはいかなくなる。

MRの活動は、医薬品産業の発展、さらには薬物治療・医薬品の適正使用への貢献しているはずだ。それはCMRも同じ。CSOも医療全体の発展に関わっていくという姿勢を協会の軸に据える必要がある。そして、その姿勢を医療関係者と共有する。それを踏まえて、今後の活動を展開していくべきだと考える。
 

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