【ESMOリポート】抗体薬物複合体のトラスツズマブ-DM1、HER2陽性転移性乳がんの一次治療として有望
公開日時 2010/10/12 06:00
HER2陽性転移性乳がんの一次治療として、抗体薬物複合体(ADC)のトラスツズマブ-DM1(T-DM1)が良好な抗腫瘍活動を示し、毒性は大幅に低いことが明らかになった。イタリア、ミラノで開催された第35回欧州臨床腫瘍学会議(ESMO)で10月11日、米メイヨクリニックのEdith Perez氏が報告した。
T-DM1は、モノクローナル抗体であるトラスツズマブと化学療法薬のDM1という2つの既存治療薬を、がん細胞に特異的に送達させることを目的に結合されたADC。同試験は、進行乳がんの一次治療としてT-DM1を検討した初の無作為化試験である。T-DM1は前臨床試験で有望な活性を示しており、他の臨床試験でも、他療法では奏効しない進行がん患者における有効性が示唆されてきた。
同試験は、化学療法の治療歴がないHER2陽性転移性乳がん患者137人を対象に、トラスツズマブとドセタキセルの併用群かT-DM1群に無作為に割り付け、約6ヶ月間追跡したもの。その結果、併用群で客観的奏効率が41%であったのに対し、T-DM1群では48%となった。一方、臨床的に意義のある有害事象の発生率は、T-DM1群が大幅に低く、併用群が75%に対し、37%となった。
同試験は現在も継続中であるとともに、タキサン+トラスツズマブの併用との比較と、3つ目のオプションとしてT-DM1とペルツズマブの併用も検討する第III相試験“MARIANNE”も目下進行中である。
◎Fabrice André氏「モノクローナル抗体と細胞毒性薬との結合が抗がん効果をもたらす」
フランス、Institut Gustave RoussyのFabrice André氏は同試験に対する評価として、T-DM1が化学療法と同等の有効性を示しながら、重篤な有害事象は大幅に抑制したことを受け、いずれ化学療法は有毒性の低い化合物に取って代わられることが同試験で確認できたとし、またモノクローナル抗体と細胞毒性薬との結合が、抗がん効果をもたらすという概念が証明されたとコメントした。