バイオマーカー基にした肺がんのオーダーメイド治療で高い有効性
公開日時 2010/05/07 04:02
肺がんのバイオマーカーによって分子標的治療薬を選択するオーダーメイド治療が、8週間目の疾患コントロールにおいて、より高い有効性を示したことが、第2相試験のBATTLE試験で明らかになった。米テキサス大M.D.アンダーソンがんセンターの研究グループが、4月17~21日ワシントンDCで開催された第101回米国がん研究会議(AACR)で報告した。
◎第2相試験のBATTLE試験で明らかに
対象被験者は、過去に1~9種類の治療を既に受けているステージIVの非小細胞肺がん患者255人。研究グループは、最初の97人をエルロチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブの単剤か、エルロチニブとベキサロテンの併用の4種類の被験者群に無作為に割り付け、新たに生検し腫瘍バイオマーカーと治療転帰とを適合する統計モデルを作成。後続の被験者はこの統計情報をもとに、同じバイオマーカーを持つ患者が有効性を得られた薬剤の被験者群に割り付けれた。
その結果、KRAS変異があった被験者では、ソラフェニブを与えられた被験者の61%が、評価項目である8週間目の疾患コントロールを達成したのに対し、他3群に割り付けられた被験者では32%であった。エルロチニブはEGFR変異の被験者で最も有効性が高く、バンデタニブはVEGFR-2の高発現、エルロチニブとベキサロテンの併用はCyclin D1欠陥またはEGFR遺伝子数が増加している被験者で、最も有効性を発揮した。
被験者全体では46%が評価項目を達成、全生存中間値は9ヶ月、1年間生存率は38%であった。有害事象はどの被験者群も最小限で、重篤な副作用の発生率は6.5%であった。
◎バイオマーカーを基本とした治療戦略の重要性を確認
研究責任者であるエドワード・キム氏は、肺がん研究の治験結果は1対5の割合で圧倒的に肯定的な試験結果が少なく、治療法の客観的情報が欠落していると指摘した上で、BATTLE試験は肺がん研究の展望を転換し、バイオマーカーを基本とした治療戦略の重要性を確認した試験であると強調した。今後のBATTLE試験では単剤だけでなく併用療法においても検証し、様々なステージの肺がん患者を対象にするとコメントしている。また最終的には、同試験のアプローチを用い、オーダーメイドの予防を目的とする治験を実施していくという。