京都乳癌コンセンサス会議(KBCCC)2011 国際大会 (3/3)
公開日時 2011/06/01 04:00
会議の総括と今後の展望
治療効果維持した低侵襲な治療へシフト
新標的治療や医療経済効果を視野に入れた治療選択を
戸井 雅和 氏
KBCCC代表、京都大学大学院医学研究科外科学講座乳腺外科学
KBCCCは、京都大学の関連施設が中心となって、日常臨床で、個々の患者に対する局所治療の方針を決定するに際に迷うような点、問題について議論し、コンセンサスを得ていこうとするものである。患者の治療成績向上、QOL向上、特にアジアにおける乳癌研究の発展、アジアの乳癌研究者の連携強化などにおいて、大きなインパクトを与える会議へと成長してきているのではないかと感じている。
予後予測、治療効果モニタリングの精度向上が
治療個別化の課題に
DCISについては、いかに患者を層別化し、個別化治療を行うかがもっとも重要な課題である。多くの患者では、良好な予後を維持したまま侵襲や負担を軽減すべきである一方、浸潤癌へと進行する少数例を適切に同定して、適切な治療を行うことが求められている。そのためにはバイオロジーのさらなる解明が必要だろう。
切除方法やマージン等については、概ねコンセンサスが得られていると考えてよい。ただ、SLNBをいかに用いていくのか、その結果をALNDとの関係でどうとらえていくのかなどについては、コンセンサスに至っていない。治療個別化という意味では今後、治療効果に加え、予後予測と、治療効果モニタリングの精度向上が重要な課題となる。この中で、今回とりあげたノモグラムの役割も見いだされていくだろう。
ALND省略については、現時点におけるエビデンスを、さらに発展させるまでには至らなかった。標準療法を変えることになるため、慎重な立場を取ることになったのではないか。しかしこのALND省略にみるように、乳癌局所治療では、治療効果は残したまま侵襲は最低限に抑え、省ける治療は省くという方向性が明らかである。今後は、新標的治療の適応や、医療経済効果を視野にいれた最適化へとつながっていくことになろう。