日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)の川俣知己会長(⽇新製薬代表取締役社⻑)は11月22日に開いた会見で、10月末を期日に後発品を製造する製造販売業者が実施した自主点検について、「会員企業の中で何品目中何品目の相違があったのかは現状把握をしていない」ことを明らかにした。川俣会長は、自主点検が日薬連主導であったことを強調。「GE薬協においては、薬制委員会、品質委員会を含め、より高品質な医薬品を安定的に供給するという取り組みをずっと続けてきている」と述べた。自主点検もこの一環としたうえで、「(自主点検が)終わった結果どうかということよりも、終わることによって一つずつ前進していると理解をしている。実施状況の把握そのものについては、さほど大きな問題ではない」との認識を示した。
日本製薬団体連合会(日薬連)は11月18日の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」に後発品を製造する製造販売業者172社が実施した自主点検の結果、対象品目の43.5%に当たる3796品目に承認書と製造等実態との間に相違があったことを報告した。後発品を製造する企業に行政処分が相次いだことを踏まえて、後発品を製造する全企業を対象に自主点検が実施された。日薬連は同日の会議では、「相違があっても仕方がない、相違があるけれども改善していけばいいというような文化があるという状況でいいのか」(豊見敦構成員・日本薬剤師会常務理事)との声があがるなど、GE薬協をはじめとした製薬企業の姿勢が問われている状況にある。再発防止の必要性も指摘される中で、原因や背景を調査する必要性を指摘する声もあがっていた。
◎「前回は試験方法欄の確認は後回しにしたことがあった」
GE薬協の川俣会長はこの点を問われ、「元々日薬連主体の自主点検なので、各企業から日薬連にダイレクトに報告いただいた。GE薬協を経由していない。会員企業の中で何品目中何品目の相違があったのかは現状把握をしていない」と説明した。GE薬協は21年に自主点検を行っており、「それ以外のGEを製造販売している会社は自主点検をしていないだろうということで、GE薬協以外の会社を含めた総合的な点検をしようというのが今回の結果」との見方を示した。
今回の自主点検では点検対象も製造方法に加え、製造の品質試験の方法などを追加された。川俣会長は、「試験方法は、どこからどこまで点検するかについて、GMP上で許される試験方法の変更なのか、承認書の整備が必要な試験法が明らかでない所もあった。前回は、試験方法欄について後回しにしたことがあった。それらも含めて自主点検をしたので、これだけの件数になったのはあり得ることかと思う」と述べた。自社の例も交えながら、「“今回が最後だからね”とプレッシャーをかけられる中で、すべての相違を確認するに至ったというのは、皆さん真摯に取り組んで頂いたものと評価している」と述べた。
◎「作業が終わったか、終わった結果どうかよりも、終わることで前進している」
GE薬協としての姿勢を問われた川俣会長は、「協会としては、薬制委員会、品質委員会を含め、より高品質な医薬品を安定的に供給するっていう取り組みをずっと続けてきており、この一環として承認書点検が今回含まれたという位置づけ。一つひとつのことをクリアすることで、より信頼性の高い医薬品の供給ができるのではないかと我々としても願っているところ」と述べた。そのうえで、「一つひとつの作業が終わったかどうか、終わった結果どうかということよりも、終わることによって一つずつ前進していると理解をしている。実施状況の把握、そのものについてはさほど大きな問題ではない」と強調。「一つひとつの取組みをすること自体が大事で、それがどのように行われたかどうかは、各社がそれぞれ判断していくこと」との考えも示した。
◎安定供給責任者会議は12月上旬に初会合へ 具体的スキームは今後議論へ
会長肝いりで設置を急ぐ「安定供給責任者会議」を12月上旬にも初会合を開き、始動させる考えも示した。会員企業の安定供給責任者を把握し、供給不安が起きた際にGE薬協が情報を集約・共有するというもの。早期正常化に向けて、各社からの相談に応じ、GE薬協がサポートを行うことや、各社の取組みの好事例を共有化することも視野に入れる。
川俣会長は、「後発医薬品の供給不安に対しては代替品の確保など、業界で連携して対応する必要があると思う」と説明。一方で、業界団体や関連企業で十分状況が把握できていなかったことを踏まえ、安定供給責任者が集う“場”を設置したい考え。
一方で、10月21日に開かれた厚労省の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」に示したスキームはこの日の会見では示さず。会議では、JGA加盟企業すべてがスキームに同意したと明言していたが、「具体的なスキームは、当初私がいくつか示した部分があるが、実行に当たっては、安定供給責任者会議のメンバーの中で議論すべきということで、代替生産のスキームはあげなかった」と述べ、今後検討を進める姿勢を示した。
GE薬協に情報を集約することで、自社以外の供給量がわかることで、「過剰な出荷調整はする必要がなくなる」と説明。また、これまで安定供給責任者同士で顔の見える関係が構築されていなかったことも相まって、「“できれば増産したくない”という気持ちが発生してしまうと、“いや、うちでは無理です”という回答につながってしまう可能性がある。安定供給責任者同士の連携がきちっとできれば、増産対応についてもスムーズに行われるのではないかと期待を込めている」と述べた。
増産が需要に追い付かない場合は、「“足りなそうなので、もうちょっと頑張ってください、皆さん”ということもGE薬協としては、会員企業に対して情報提供できるような仕組みになればいいと思っている」と述べた。ただ、こうしたGE薬協の関与については公正取引委員会の確認が必要だとして、「いま、厚生労働省の方には確認を取ってもらっているところ」と説明。「独禁法上問題にならないのかどうかっていう確認を一つひとつやっていかないと、“やっぱり駄目でした”となってしまえば取り返しがつかない。歯がゆいが、より慎重に対応していく必要があると考えている」との認識も示した。このほか、「企業同士はライバル。供給不安の時に、この会社にとられたくないとかの塩飽もあると思う。シェアを取るとか取らないとかの話にならないようにしていかないといけない」とも述べた。
◎産業構造あり方検討会でビジョン作成へ 次世代ビジョンに加え「骨太見据え、現実的な議論を」
「JGA産業構造あり方研究会」を今年度中にも立ち上げることも報告した。厚生労働省「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の委員を招聘し、経営方針の変更、整理・統合、あるいは撤退の判断をするための情報提供をすることを目的として議論を進める考え。「来年の骨太の方針に向けて、我々GE薬協としてもビジョンを公表していく必要があるのではないか」との考えを示した。これまでGE薬協では政策委員会が次世代産業ビジョンを検討しており、新たなビジョンも「まもなく発表できる」(川俣会長)にあるという。川俣会長は、「これに加えて、このあり方検討会で指摘を受けた現実的な産業構造についても議論する必要があると思う」と述べ、新たな研究会立上げの意義を強調した。