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中医協・薬価専門部会 新薬創出等加算 「対象企業を残し企業指標撤廃」案もなお慎重論 

公開日時 2023/11/30 07:02
厚労省は11月29日、中医協薬価専門部会に2024年度薬価制度改革に向けて、新薬創出等加算について、対象企業を定める規定を残し、企業指標を廃止することを提案した。改革により、革新的新薬の薬価を維持する制度に改革することで、イノベーション推進を打ち出したい考えだ。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は対象企業を定める要件は差別化を目的としていないことから、「単純に企業要件および企業指標をなくせば良いということにはならない」と指摘した。このほか、ドラッグ・ラグ/ロス解消に向けて、革新的新薬を日本へ迅速に導入した場合の評価として、「迅速導入加算」を導入することも提案した。

◎新薬創出等加算 対象企業の規定に未承認薬開発も診療側・長島委員「厳しくない指標」

新薬創出等加算をめぐり、厚労省はドラッグ・ラグ/ロス解消に向けて企業指標の廃止を提案した。ただ、企業要件の廃止により企業の取り組みが後退することを懸念する声が出たことを踏まえて、さらに検討が進められている。

新薬創出等加算は薬価上の加算係数を決める企業指標とは別に、対象企業として、「未承認薬等検討会議における検討結果を踏まえ、厚生労働省から開発を要請された品目について、開発の拒否、合理的な理由のない開発の遅延等、適切に対応を行わなかった企業以外の企業とする」ことが薬価基準に明記されている。このため、厚労省は対象企業の規定を残したうえで、企業指標を廃止することを提案した。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「対象企業を定める企業要件を残すことはもちろんだが、それほど厳しくはない。この要件はそもそも新薬創出および適応外薬解消に対する姿勢を評価しており、差別化することを目的として意識はしていない」と指摘。
「加算係数を検討する際において、企業の姿勢を加味することが必要になっているものと考える。仮に加算件数を全廃してほしいということであれば、加算係数に用いている企業の姿勢を示す指標を対象企業を定める際の要件に設定する必要が生じる」と述べた。

◎国内開発を推進しないというメッセージ送るとの懸念も 

企業指標が導入された経緯として、国内開発を重視していたことにも触れ、「企業指標の国内試験に関する指標をなくすということは、今後はそれほど国内治験を推進しないというメッセージを関係者に与えることになり、適切とは言えない」と指摘した。

これに対し、厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「もちろん、未承認薬を解消することとドラッグ・ロスの解消は同様の趣旨で、国内開発をどう進めていくかというところは大事な視点だと思っている。そういったメッセージをなくすつもりはない。先ほどの指摘も踏まえ、どういった形でこのルールの中に対象企業の考え方を整理したい」と述べた。

◎藤原専門委員 企業要件の廃止は「グローバルに強いメッセージ」も 効果には「10年かかる」

診療側の長島委員は、「ドラッグ・ラグ/ロスの解消のためには、薬価に加え、治験や開発を取り巻く環境の影響も考えなければならない。新薬創出等加算の見直しの妥当性を検証するだけでなく、業界においては薬価制度における対応以外の要素についても検討し、総合的にこの場で報告をお願いしたい」と述べた。さらに、「政策の影響はすぐに目に見えて現れるものではない。開発計画の見直しなどは極めて重要な事項であるため、決定にはそれなりの時間がかかると思うが、例えばグローバル企業において、すぐに日本での開発品目を増やすという決断ができるのか。どれくらいの期間で経緯を見守る必要があるのでか」と質した。

藤原尚也専門委員(中外製薬参与渉外調査担当)は、「企業の開発の意思決定は、薬価のみならず、治験環境、薬事環境、そして総合的な観点から開発の投資判断をするものと考えている」と説明。「企業要件の廃止となると、グローバルに対して日本は適切にイノベーションを評価するという強いメッセージを発信することになると思う。これは企業の開発の意思決定に大きな影響を与えるのではないか考えている。一方で、承認や収載など、形として現れるには開発の期間10年ぐらいかかるというふうに言われている。承認、収載というような形を見るにはそうした期間が必要ではないか」と述べた。

◎業界の“ディスインセンティブ”発言に釘 意見陳述で具体的説明求める

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、新薬創出等加算の議論の際に、石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)が“ディスインセンティブ”と発言したことについて、「“区分3”でもかなりの薬価引き下げが猶予されている仕組みの中でインセンティブの低下と理解するが、ディスインセンティブというと“阻害”となるので、かなり強い意味になる」と釘をさした。そのうえで、「仮にこの企業要件を廃止した場合に、どのように企業の中で研究開発が促されていくのか、具体的な説明を持って業界ヒアリングの中でお願いをしたい」と述べた。

石牟禮専門委員は、「我々業界としましては企業要件そのものがドラッグ・ラグ/ロスを誘引するような阻害要因になっているという見方もあるということを踏まえて申し上げた。どんなに革新的新薬でも基本的には薬価を下げることになると減算という仕組みで、その仕組みが入っていること自体が、薬価を維持し、かつ革新的新薬からの収益を持って次の新薬の開発を進めるということからすれば阻害要因になっているという見方があることを踏まえて申し上げた」と述べた。企業要件の廃止は、「我々日本の企業にとっても、マザーマーケットの日本市場の魅力度を高めるという点でも非常に大きな見直しになると理解をしている。国内企業も国際共同治験などに日本を組み入れていくという活動が増えていくものと確信している」と理解を訴えた。

◎診療側・森委員 対象企業の要件残れば「品目要件で対応可能」と企業指標廃止に賛成

一方、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「薬価算定の基準にある対象企業の考え方については、規模により不利になるものでないので、何らかの形で残すべき。この要件が残るのであれば、開発要請品目は、対象企業の考え方、開発候補品目について品目要件で対応できることになるので、加算係数を判断するための企業指標を廃止することは妥当と考える」と賛成した。支払側の眞田享委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)も、「ドラッグ・ラグ/ロスの解消と創薬力の評価の観点から、イノベーションを適切に評価できるよう新薬創出等加算を見直していくことは必要だろう。加算の対象となる企業の規定は残しつつ、企業指標については廃止するという方向性が望ましい」と述べた。

◎収載後の外国平均価格調整による引上げも 上限値は1.20倍に

このほか、新薬の評価としては、薬事制度の先駆的医薬品に対応する先駆加算に準じた取り扱いとして、日本へ迅速に導入したことを評価する「迅速導入加算」や、成人の開発時に小児用の開発計画を同時に策定し、開発を進めた品目について薬価上のインセンティブを導入することも提案した。収載後の外国平均価格調整については、現行ルールでは引下げしかないが、引上げを行うようルール改正を提案。患者負担増に配慮する観点から、「改定前薬価の1.20倍」とする上限を設定するとした。

◎市場拡大再算定 共連れルール「特例領域での類似品適用除外」 反対意見も

市場拡大再算定については、いわゆる“共連れ”ルールについて、「あらかじめ中医協で領域を特定して当該領域については類似品の適用を除外する」ことを提案した。

診療側の長島委員は、「重複している効能がたとえ一つでも、それが主たる効能であれば、当然類似薬として対象とすべきであり、状況は様々であることが想定されるので、明文化することは難しく、これまで通り薬価算定組織で検討された結果を中医協に提案いただき、市場拡大再算定の趣旨である公的保険制度における薬剤費の適切な配分を踏まえつつ、中医協で判断するのが適当」と従来通り、反対姿勢を崩さなかった。

診療側の森委員は、「PD-L1阻害薬のように、複数の品目の効能が様々であり、課題のある領域では除外を検討しても良いと考える」と述べた。


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