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岸田首相「日本を創薬の地に」政府のコミット宣言 環境整備に予算も 政権の”本気度”国内外に強力発信

公開日時 2024/07/31 06:30
岸田文雄首相は7月30日に首相官邸で開いた創薬エコシステムサミットで、「日本を世界の人々に貢献できる“創薬の地”としていく。こうした方針を政府がコミットしていく」と宣言した。海外からの製薬企業や製薬団体などを前に、医薬品産業を基幹産業に位置付け、予算確保も含めて環境整備に取り組む方針を示し、政権としての“本気度”を国内外に協力に発信した。「世界に広く働きかけ、国内外から優れた人材や資金を集結させることで、アジアをはじめとした世界の人々に貢献する」姿を描いた。そのうえで、「実際に患者さんの手に革新的な薬を届けることは、残念ながら政府の力だけではできない。主役は(創薬の担い手である)皆様方だ」と述べ、官民がタッグを組み、創薬力強化に取り組むよう呼びかけた。

◎「アジアをはじめとした世界の人々に貢献する創薬の地に」


「岸田政権は医薬品産業を成長産業・基幹産業と位置付け、政府として、民間の更なる投資を呼び込む体制・基盤の整備に必要な予算を確保し、政府を挙げて創薬力構想会議の提言を具体的に進めていくことを国内外にお約束する」-。国内外の製薬企業や団体、アカデミア、創薬スタートアップ、ベンチャーキャピタルやインキュベーション、CROやCDMOなど、官民から様々なプレーヤーが集う中で、岸田首相は、一国の首相としての決意を語った。

目指す姿は、世界の他のエコシステムや、そのプレーヤーとつながり、発展する姿だ。「世界に広く働きかけ、国内外から優れた人材や資金を集結させることで、アジアをはじめとした世界の人々に貢献できる創薬の地としていく。特に、高齢者人口の急増による疾病構造の変化が見込まれるアジア・太平洋地域で必要とされる医薬品の開発に重要な役割を果たす」と強調した。

◎臨床試験の体制整備、外国製薬企業やVCの呼び込み、アーリーからの支援「必ず実現」

環境整備については政府として全力で取り組む姿勢を強調。同日発表した政策目標・工程表について、「政府を挙げて創薬力構想会議の提言を具体的に進めていくことを国内外に向けてお約束するもの」と強調した。中でも、岸田首相が「必ず実現する」と力を込めたのが、3つの施策だ。第一に、ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験実施体制整備など、国際水準の治験や臨床試験の実施体制の整備を進めること。第二に、外国の製薬企業やベンチャーキャピタル(VC)も呼びこみ、アカデミアやスタートアップのシーズを育て、実用化まで連続的な支援を行う環境・体制を日本に構築すること。第三に、創薬ベンチャーエコシステム事業をよりアーリーな段階から支援を行えるようにすること等を通じて、創薬スタートアップへの民間投資額を5年後の2028年には2倍にし、企業価値100億円以上の創薬スタートアップを10社以上輩出するなど、投資とイノベーションが継続して起こるシステムの実現をあげた。

◎「主役は創薬の担い手である皆様方」 基礎研究と実用化研究の双方専門家連携

「実際に患者さんの手に革新的なお薬を届けることは、残念ながら政府の力だけではできない。主役は(創薬の担い手である)皆様方であると思っている」と強調。ただ、プレーヤー単独では実用化までのハードルが高いことも指摘し、「創薬に携わるプレーヤーの方々が連携し、時にバトンを渡すかのように代わる代わる支援をして大切に育てながら、やっと新しいお薬が生まれる」と述べた。そのうえで、「アカデミアの研究力を維持・向上し、スター・サイエンティストを生み出すとともに、創薬の経験を有する方などが、実用化の観点から初期段階の研究開発計画の作成支援を行うなど、基礎研究と実用化研究の双方の専門家を連携させることで、そのシーズを掘り起こし、創薬に結び付けていく。こうした取組を更に拡げて行くための方策について、官民で力を合わせて検討していこう」と強調した。

◎官民協議会前に製薬団体 大胆な国家戦略の策定や省庁横断的な統合的な政策立案を

官民の連携に向けて、2025年度に設置予定の「官民協議会」についても製薬業界などから意見を聞いた。日本製薬工業協会(製薬協)の上野裕明会長(田辺三菱製薬)は、医薬品産業の特徴に基づき、施策の一貫性や継続性、統合性などの重要性を強調。「多くの施策がAMEDを中心に行われているが、各施策が各省庁の予算に基づいていることもあり、どうしても縦割りの感が否めない。その結果、必ずしも効果的に運用されてない」と指摘。「今後の官民協議会でも、省庁横断的な統合的な観点つまり各施策のつながりやまとまりを意識した議論が展開することを期待している」と述べ、製薬協としても積極的に提案する姿勢を示した。

米国研究製薬工業協会(PhRMA)のハンス・クレム日本代表は、「官民協議会は、日本のエコシステムにおける研究開発分野、薬事規制分野、保険償還分野の各課題に対処するための政策を特定し、実施すべき」と指摘。具体的には、透明性が高くイノベーションを促進する薬価制度や、研究開発とスタートアップの環境強化、薬事規制の改善などの必要性を指摘し、
すべての要素がうまく機能するような「大胆な国家戦略」の策定を求めた。

欧州製薬団体連合会(EFPIA)のNathalie Moll Director Generalは、欧州も日本と同様に投資が減少しており、米国と中国に比べて「欧州と日本はかなり遅れを取った。その中で日欧が協力する必要がある」と指摘した。デンマークなどでは官民協議会がすでに設置されていることに触れたうえで、「患者の声に耳を傾けることが非常に重視されている」と述べ、患者の声を政策に取り入れる必要性を強調した。

◎武見厚労相 「厚労相としてしっかりコミット」 創薬クラスター強化へ予算確保も

サミット後には、官民や専門性、組織などの垣根を超えたネットワーク強化に向けたレセプションも開催し、約400名が参加した。

武見敬三厚労相は、「我が国は世界とつながり、革新的な医薬品を創出することを通じて、世界中の人々の健康と幸福に貢献するため、厚労働大臣として、にしっかりとコミットしていきたい」と強調した。「海外の実用化ノウハウを有する人材や資金を積極的に呼び込み、世界の人々のユニバーサルヘルスカバレッジに貢献できる創薬の地として、改めて発展させていきたい」と意欲をみせた。

創薬クラスターを強化する方針も強調。「我が国にも優れた創薬クラスターが複数存在をしている」と述べたうえで、「例えば、各クラスターにおいて不足している機能を充足させるための支援を積極的に行うことで、さらなる民間投資を呼び込むための必要な予算を確保し、その育成と発展を目指す」と述べた。また、「革新的モダリティーの臨床開発や製造に関しても強化を図る」と表明。「FIH試験の実施体制の国内整備、実際の生産設備を利用したバイオ製造人材の育成などにより、革新的な新薬の創出に向けた基盤の準備をしてまいる」と述べた。

また、有望なシーズを掘り起こし、実用化につなげるうえで、「創薬の経験を有する方などが、実用化の観点から初期段階の支援を行うなど、基礎研究と実用化研究双方の専門家を連携させることが極めて重要。こうした取組みについて、民間のさらなる投資を呼び込むことができるように、政府として体制基盤の整備に全力で取り組む」と強調した。


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