協和キリン AM-Pharma社の敗血症性急性腎障害改善薬「ilofotase alfa」の国内権利獲得
公開日時 2021/09/09 04:50
協和キリンは9月8日、オランダのAM-Pharma社が開発した遺伝子組み換えヒトアルカリホスファターゼ「ilofotase alfa」について、日本での独占的な開発・販売権を獲得するライセンス契約を締結したと発表した。同剤は敗血症性急性腎障害(SA-AKI)を改善する最初の治療薬になる可能性がある。
同剤は現在、第3相国際共同試験(REVIVAL試験)が行われている。日本に関しては、AM-Pharmaが7月に、日本で最初の症例登録を実施したと発表している。協和キリンとAM-Pharmaは契約に基づき、AM-Pharmaが日本におけるREVIVAL第3相ピボタル試験と第1相の薬物動態・安全性・忍容性試験の完了と薬剤供給を担当し、協和キリンは日本でのilofotase alfaの薬事承認プロセスと販売を担当する。
AM-Pharmaは協和キリンから、契約一時金2000万ユーロ、申請前のマイルストン3000万ユーロ、申請・薬価収載・販売に関連したマイルストンとして最大1億9500万ユーロを受け取る権利があり、契約総額は最大2億4500万ユーロとなる。また、AM-Pharmaは、売上に応じた2桁%台のロイヤルティと製品供給対価を受け取ることができる。
急性腎障害は、腎臓に炎症が起こり、腎機能が完全に失われてしまう病気のこと。腎障害の重症度や原因にもよるが、最大で60%の患者が死亡する。腎臓は敗血症による影響を最も受けやすい臓器で、SA-AKIを引き起こし、敗血症における死亡率及び罹患率のリスクを著しく高める。現時点ではこのような重篤な症状を変える単一で有効な治療法は承認されていない。
ilofotase alfaは、天然に存在する2種類のヒトアルカリホスファターゼ酵素のアイソフォームから構築された独自の遺伝子組換えヒトアルカリホスファターゼ。この酵素は急性炎症、凝固、微小血管虚血を引き起こすATP、ADP、リポ多糖(LPS)、その他の細胞外基質などのダメージ関連分子パターン(DAMPs)や病原体関連分子パターン(PAMPs)を脱リン酸化し、無害化する優れた活性を有するという。
研究の結果、ATPの脱リン酸化には、腎障害を防ぐという二重の効果があることがわかっている。炎症誘発性のATPが脱リン酸化されると、結果として生じるアデノシンは、免疫抑制性のアデノシンA2a受容体経路(A2aR)の活性化を通じてさらに炎症を抑制する。AM-Pharmaは、患者にilofotase alfa を投与することで、局所的および全身的な炎症を抑えるだけでなく、腎臓や他の臓器も、さらなる損傷から守ることができると考えている。