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中医協 費用対効果評価試行的導入で企業と第三者分析に隔たり 2段階の薬価改定も

公開日時 2017/11/13 03:51

厚生労働省保険局医療課は11月10日、中医協の費用対効果評価・薬価・保険材料の各専門部会の合同部会に、費用対効果評価の試行的導入に際して実施した企業分析と、学者など第三者による再分析の結果が大きく異なる品目があったと報告した。分析の前提やデータの選択方法などに隔たりがあったため。分析結果を踏まえた価格調整と薬価改定は、予定通り2018年4月に行うが、企業と第三者の分析結果の乖離が大きい場合には、価格の変動の少ない、いわば現行の薬価に近い価格を採用する考えだ。一方で、厚労省側は最終的な結論が出た時点で引下げを含めた最終的な薬価調整、さらには薬価改定を行う考えを示しており、品目によっては2段階の価格調整、薬価改定が行われる可能性もある。

◎分析の前提やデータセットの違いが影響

費用対効果評価は、企業、第三者による分析を踏まえて、総合的評価(アプレイザル)を行い、薬価の引下げを含めた価格調整を行う。この日の中医協で、厚労省は試行的導入の現状を報告する中で、企業と第三者の分析に隔たりがあったことを報告した。理由としては、①対象集団や介入方法、比較対象品目(技術)など分析の前提、②分析に用いるデータなどの選択方法(選択基準)--が異なっていたと説明した。データのうち、効果推計として、統計学的な信頼性の高いランダム化比較試験(RCT)と、観察研究を含めたデータの新しさのいずれを優先するかでデータセットが異なることをあげた。一方で、費用についても、標準歴な症例のデータを用いて推計した場合とNDBなどのレセプトデータを用いた推計による違いなどをあげた。

分析結果に基づいて価格調整、18年4月の薬価・診療報酬改定での薬価改定が行われる。企業と第三者の分析結果が“一致、もしくは概ね一致”する場合には、価格調整を行い、費用対効果評価を反映した価格とする。

一方で、分析結果に隔たりがあった場合には、より妥当性が認められる結果をベースに価格調整を進める。ただ、両分析共に科学性が高く、妥当性について判断することが困難なことがあることから、アプレイザルにも両分析の結果を併記することを認めた。こうした品目については、18年4月時点で現行薬価に近い結果を採用して薬価改定を実施。企業側からの意見も踏まえて、引き続き「検証」を行い、18年中を目途に最終的な結論を得る考え。この時、得られた薬価に引き下げるなどするのではなく、薬価改定が18年4月に行われたと仮定し、薬価差とマーケットなどを踏まえて、薬価の引下げなどを行う方針だ。引下げ時期について、厚労省保険局医療課の古元重和企画官は、「分析を進める中で結果が出て価格調整ができたら速やかに行う」と述べた。

◎本格導入に向け対象品目や分析機関、GLなどの見直しも

厚労省側は、「分析開始前に、分析の枠組みなどについては事前相談を行い、一定の合意を得て進めてきた」と理解を求めたが、診療側、支払側各側から指摘が相次いだ。診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、「最初から見解が違うとわかっていたら結果が違うのは当たり前の話だ。話し合いをきっちりすべきだった」、支払側の吉森俊和委員(全国保険協会理事)も、「アプレイザルの段階で、基本的な課題が出てくること自体が甚だ遺憾だと言わざるを得ない」と苦言を呈した。

厚労省保険局医療課の迫井正深課長も、「制度化について、色々な課題が出たのは偽らざる事実」と認めた。古元企画官は、2018年度の本格導入に向けて、「対象品目の選定方法や期間、分析機関をどう置き、充実するか。ガイドライン改正を含めて検討していきたい」と述べ、試行的導入の結果を踏まえて見直しを進める考えを示した。

試行的導入の対象品目のうち医薬品は、抗がん剤のオプジーボとカドサイラ、C型肝炎治療薬のハーボニー、ソバルディ、ダクルインザ、スンベプラ、ヴィキラックスの7品目。

◎特別調査の結果を中医協総会に報告 薬剤服用歴管理指導料が改定の論点に

同日開かれた総会では、16年度診療報酬改定の影響を受け、特別調査の結果も報告された。16年度改定では、高齢化に伴って社会問題化した残薬や重複・多剤併用の改善に向け、かかりつけ薬剤師指導料が新設された。特別調査の結果によると、かかりつけ薬剤師指導料の同意患者数は、2017年6月1か月で28.2人(保険薬局の有効回答数:1149件、処方箋受付回数:1169.7回)で全処方箋のうち約2%、新規にかかりつけ薬剤師指導料を算定したのは3.0人(同)で、1%にも届かなかった。ただ、導入への影響については保険薬局から、「丁寧な服薬指導ができるようになった」(70.3%)、「重複投薬・飲み合わせのチェックが行いやすくなった」(67.8%)、「残薬解消を積極的に行うようになった」(67・7%)などの声があがった。患者調査の結果からは、「自分の飲んでいる薬をすべて把握している」(79.1%)ことなどを評価する声もあがった。

一方で、薬剤服用歴管理指導料はお薬手帳の持参の有無と、来局のタイミング(6か月以内の来局の有無)で2段階の評価(38点と50点)に分かれている。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、調剤医療費のうち、薬剤服用歴管理指導料だけが大きく伸長していることを疑問視。特に調剤チェーンに属す大型門前薬局などで調剤基本料の引下げを受けた薬局に来局した場合、患者がお薬手帳を持参しても50点を算定することになる。幸野委員は、「患者にとっては、お薬手帳をもって大型門前に行って50点取られるのは矛盾だ。次回改定の見直し対象になる」と指摘した。

そのほか、支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は患者の立場から、「診療報酬の点数を患者に提示する診療報酬明細書は患者との情報共有に必要だ」と述べ、診療所を含めた全医療機関での明細書の無料発行を求めた。

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