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製薬協 政策提言2019公表 薬価加算体系の再編求める ビッグデータ利活用も

公開日時 2019/01/25 03:52

日本製薬工業協会(製薬協)は1月24日、「製薬協政策提言2019-イノベーションの追求と社会課題の解決に向けて」を発表した。政策提言では、産官学が一体となった“ヘルスケアイノベーションエコシステム”を構築し、これまでの医薬品の枠を超えた予防・先制医療ソリューションを早期に実用化し、日本経済に貢献する姿を描いた。そのための施策として、医薬品の多面的価値を評価し、薬価上の加算体系を再編するなど、国民にも理解しやすい薬価制度構築に向けた抜本的な見直しを求めた。また、人工知能(AI)を活用することを視野に、健康医療ビッグデータの利活用など創薬環境の整備を訴えた。

「もう薬価制度は限界にきている。イノベーションを享受し、より良い社会ができるのであれば、基本に立ち返って物事を整理する必要がある」-。製薬協の中山讓治会長(第一三共会長)は同日開いた記者会見で、新たな政策提言のなかに薬価体系の在り方を提案した背景をこう語った。

“Society5.0”と言われるようにAIやICTが破壊的イノベーションを起こすと言われるなかで、ライフサイエンス分野は革新的技術を活用した成長産業の一角に位置付けられる。製薬産業が主導し、アカデミア、ベンチャー、ファンド、行政、医療機関を含む広範なエコシステムを構築することで、医薬品の枠組みを超え、予防・先制医療を実現。健康寿命の延伸、さらには日本経済への貢献する姿も期待できる。世界最先端のヘルスケアイノベーション創出国として国際競争力を高めることも期待できる。中山会長は、「創薬のノウハウや事業展開力を様々なステークホルダーとつなぎ合わせることができる」と述べ、エコシステムにおける製薬業界の役割を強調した。こうした新たな姿へと転換するために政策提言では、①イノベーションの推進と国民皆保険の持続性の両立、②イノベーション創出に向けた環境整備―の2軸の必要性を訴えた。

◎薬価改定に頼らない医療・社会保障改革を推進

中山会長は、「薬価改定に頼らない医療・社会保障改革の推進」の必要性を強調した。そのうえで、現行の薬価制度について、「医薬品の価値が適切に反映されていない場合がある」として抜本的な見直しを求めた。

具体的には、薬価上の加算体系の再編と新薬創出等加算の見直しを要望した。現行の画期性加算や有用性加算は有効性・安全性や新規作用機序などで評価されているが、これを統合。利便性を含めた多面的な価値をポイント制で積み上げるシンプルな評価体系に見直すことを求めた。

そのうえで、現行の有効性・安全性などの「医療的価値」だけでなく、「社会的価値」を新たに評価することを要望した。“社会的価値”とは、回復した患者の就労や介護者の負担軽減などの経済性、労働生産性の向上、さらには政策的に必要に薬品の開発促進、科学技術の進歩に寄与することなどをあげた。

現行の小児加算や希少疾病への加算をベースに、経済性、労働生産性の軸を新たに追加し、「医療資源の消費を効率化するものや労働生産性が評価されたもの」、「政策的に必要な医薬品の開発を促進させる項目」を加算として評価することを求めた。具体的には、先駆け審査指定制度対象品や希少疾病用医薬品などを評価する「承認審査制度加算」(仮称)や小児疾患などに対する「特定集団/特定背景患者加算」(仮称)の新設を要望した。

中山会長は、「医薬品の価値が適切に薬価上の加算に適切に反映されていない。多面的な価値を積み上げたシンプルな加算体系が必要だ」と強調。「理念上、医薬品の価値の次元を少なくとも二次元的に見たほうがいい」と述べた。現行の薬価制度が複雑だと言及し、国民にわかりやすい薬価制度とするためにも制度の再構築を求めた。

◎類似薬効比較方式をベースに

薬価の算定方式については、「原価計算方式ではそもそも医薬品の価値を適切に評価しているとは言えない」と言及した。現行の類似薬効比較方式をベースとした薬価制度に改めることを求めた。現行の類似薬効比較方式の比較対照薬選定の幅を拡大。患者数など対象患者の特性、既存治療の臨床的位置づけなどを加味した「医療実態に基づく算定」とすることを求めた。さらに比較対照薬を適切に選定し、医薬品の多面的な価値を専門的・客観的に評価する仕組みとして、「評価報告書」(仮称)を活用する評価システムを確立することを求めた。今後はコンセプトを基に日本製薬団体連合会(日薬連)で詳細について詰めるという。加算体系再編や新薬創出等加算の見直しは、2020年度薬価制度改革に向け、ステークホルダーからの理解を求めていく考え。

一方で、製薬協として、▽情報提供活動の適正化、▽薬剤耐性AMR問題への取り組み、▽ポリファーマシー・残薬などへの対応、▽高額薬剤の最適使用-を軸に、医薬品の適正使用推進への取り組みを強化する姿勢も示した。メディカルアフェアーズについても基本的な考え方を取りまとめる。

◎RWDの利活用の必要性にも言及

イノベーション創出に向けて、大規模リアルワールドデータ(RWD)の利活用の重要性についても言及した。個人識別符号に該当するゲノム情報の利用など製薬業界の二次利用を求めた。また医療現場での利用を進めるために、患者や医療機関などへのインセンティブやデータ標準化の推進、医療等分野における識別子の確実な導入を求めた。中山会長は「それぞれハードルが高い」との認識を示したうえで、政府の策定する健康・医療戦略を見据え、ステークホルダーから理解を求める考えを示した。

創薬環境の整備には国の予算確保も必要になるが、「医薬品のイノベーションが社会にプラスを生み出すものかを、ぜひ機会あるごとに伝えていきたい。中長期的に意味のあるイノベーションには投資しようと理解は得られるものだと思っている」と述べた。

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