諮問会議 骨太方針骨子案めぐり議論 生産性革命の実現・イノベーション促進など明記へ
公開日時 2018/05/29 03:52
政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)は5月28日、骨太方針の骨子案をめぐり議論した。骨子案では、「生産性革命の実現と拡大」や「投資とイノベーションの促進」といった項目を盛り込み、革新的創薬を含む新規技術の評価など、第4次産業革命技術がもたらす変化・新たな展開について明記することが明らかになった。主要分野別項目では、焦点となる社会保障費の伸びの抑制について、2019~21年度を「基盤強化期間(仮称)」と位置付け、医療・介護サービス供給体制の適正化・効率化や、生産性向上、給付と負担の適正化などに取り組む考えを明示する。政府・与党内の調整を経て6月の閣議決定を目指す。
◎数値目標明記せず 高齢化の伸び見据えさらなる切込みも
社会保障費の自然増の伸びの抑制について、19年からの3年間は、目標値を明記しない方針だ。直近3年間は75歳以上人口の伸びが年率3.3%だったが、19~21年度は1.5%と鈍化する。このため社会保障費の自然増の伸びも過去3年間と異なることから、あえて数値目標を明示せず、単年度の予算編成の中で対応する。このため社会保障費の伸びについては、その時々の社会経済情勢や19年秋の消費税率の見直しを見据え、必要に応じて抑制策を講ずる。医療界や製薬業界にとっては、19年度の消費増税に伴う薬価改定や20年度の薬価・診療報酬改定がこの間に控えており、楽観視できない状況が今後3年間続く。生産性向上が産業構造改革の次なる課題になる。
この日の諮問会議で、安倍晋三首相は、「基礎的財政収支(PB)黒字化に向け、社会保障改革を軸にしながら、団塊の世代が75歳に入り始める2022年度の前までの3年間で、持続可能な経済財政基盤を固めていく必要がある」と述べた。麻生太郎財務相は、「PB黒字化に向け、社会保障費の伸びは高齢化に相当する範囲内に抑えることは堅持すべき。重点項目を取りまとめ、2019~21年度の間から実行に移すことが必要だ」と述べ、さらなる切込みを入れる姿勢を示した。
◎イノベーションで産業構造改革 一方で保険財政とのバランス求める声も
骨太方針の骨子案では、生産性革命の実現と拡大として「第4次産業革命技術がもたらす変化・新たな展開」を明記する。さらに重要課題への取り組みとして、「投資とイノベーションの評価」などを明記する。先の薬価制度抜本改革では、長期収載品に依存するモデルから革新的新薬を創出できる産業構造への転換が製薬業界に求められた。今回の骨太方針では、バイオ医薬品や遺伝子治療、ゲノム創薬などのイノベーション技術が今後急速に進歩することを念頭に、ICTやAI(人工知能)、ビッグデータを利活用し、バイオベンチャーの育成を含む創薬技術を創出できる産業構造への転換についてのニュアンスを明示する考えだ。なお、イノベーションの評価をめぐっては、政府は2017年末に、リアルワールドデータ(RWD)の利活用などを盛り込んだ、緊急政策パッケージ「日本創薬力強化プラン」を策定しており、研究開発の生産性向上を後押しする。
一方、イノベーションの評価をめぐっては、財務省の財政制度審議会の建議(5月20日)に示されたように、「高度・高額な医療技術や医薬品への対応」として、経済性等を踏まえた公的保険での新規医薬品等の対応のあり方や費用対効果の活用などが求められている。財務省としては、19年度から3年間の「基盤強化期間(仮称)」の中で、薬事承認を受けた新薬の保険収載の見送りや、償還可能水準までの薬価の引き下げなどを厚労省に求める姿勢を崩していない。
◎消費税率19年10月に10%引上げへ 景気対策を19、20年度の当初予算で
消費税率を2019年10月に10%へ引き上げることも明記する。増税に伴う、駆け込み需要とその後の反動による消費の冷え込みが日本経済へ深刻な打撃を与えないよう、19、20年度の当初予算で対応することも盛り込んだ。新たな財政健全化計画では、基礎的財政収支(PB)黒字化を2025年度までに達成することを目指す。中間検証として、21年度時点で進捗状況を評価する方針。