大正製薬HD 大正富山を完全子会社化、富山化学全株式を富士フイルムに売却 7月末に
公開日時 2018/05/15 03:51
大正製薬ホールディングス(HD)は5月14日、富山化学が45%を保有する大正富山医薬品の全株式を買い取り、大正富山医薬品を完全子会社化すると発表した。併せて、大正製薬HDが34%を保有する富山化学の全株式を富士フイルムホールディングス(HD)に売却することも発表した。株式の買い取り及び売却は、いずれも7月31日付で実施する。2008年からの大正製薬HD、富士フイルムHD、富山化学の3社間での戦略的資本・業務提携のうち、大正富山と富山化学に関する資本提携関係を「発展的に解消する」としている。
■上原明社長 「急速な環境変化に対応するため、より機動的な経営判断できる体制構築」
大正製薬HDの上原明社長は同日開いた17年度決算会見で、「薬価制度の抜本改革やヘルスケア領域への他業界からの参入もあり、製薬業界をめぐる環境変化は著しい」と指摘。そして、「これら急速な環境変化に対応するため、より機動的な経営判断ができる体制を構築する必要がある」との認識を示し、大正富山の完全子会社化などを決議したと説明した。
上原茂副社長(大正製薬社長)は会見で、大正富山の完全子会社化で大正製薬グループとしてのより早い意思決定や重点領域の絞り込み、積極的な製品導入活動につながるとの見方を示した。
大正製薬HDによると、大正富山の全株式を取得する一方、富山化学の全株式を売却することで、差し引き418億円の特別利益を18年度に計上する見込みという。内訳は開示していない。
■大正富山による富山化学製品の販売は当面継続
大正富山は、02年に大正製薬と富山化学が出資し、医療用医薬品の国内販売を行う企業として発足した。現在の主力品のうち、富山化学製品には抗菌薬のゾシンやジェニナックなどがある。富士フイルムグループや富山化学は医療用医薬品の販売機能を持っていない。
上原副社長は、「安定供給を第一に考えている」と強調し、大正富山による富山化学製品の販売は「当面の間は継続し、安定供給に影響が出ない着地点を見つけるまで、大きく変えることは考えていない」と語った。この日の発表資料でも、大正富山による富山化学製品の販売を「当面継続する」としたものの、「その後の方針は現時点で未定」としており、検討課題としている。
今回の体制見直しのポイントのひとつに「より機動的な経営判断ができる体制」を掲げているなか、大正製薬に販売機能を持たせるのではなく、大正富山を存続させることが効率的なのかどうかも気になるところ。この点について藤田憲一取締役(大正富山医薬品社長)は会見で、「いまのところは医薬品の安定供給を含めて、大正富山で継続して供給していくことは決めている。将来にわたってこの姿がどうなるのかについては、関係各所や部門と相談して対応していく」と述べ、大正製薬グループの医療用薬の販売機能について今後、検討していく構えをみせた。
■富山化学と富士フイルムRIファーマの統合新会社、10月スタート 診断から治療のトータルソリューションを提供
富士フイルムHDはこの日、大正製薬HDが保有する富山化学の全株式を7月末日に取得して完全子会社化するとともに、10月1日付で富山化学と富士フイルムRIファーマを統合し、「富士フイルム富山化学株式会社」としてスタートすると発表した。
富士フイルムRIファーマが存続会社となる。統合新会社の社長や売上規模などは開示していない。
富山化学は低分子医薬品を、富士フイルムRIファーマは放射性診断薬・治療薬をそれぞれ扱っている。両社を統合することで、「診断薬と組み合わせた治療薬の効率的な臨床開発を進め、新薬上市の確度とスピードの向上を図る」としている。また、新薬の研究などを行う富士フイルムが持つ体外診断機器・試薬なども活用し、「疾患に対する『診断』から『治療』のトータルソリューション展開を拡大させていく」とも説明している。
■がん、中枢神経疾患、感染症のアンメットニーズに集中
富士フイルムグループの医薬品事業では、アンメットメディカルニーズの高い▽がん▽中枢神経疾患▽感染症――の3つを注力領域に位置付けている。統合新会社もこの3領域にリソースを集中し、新規の放射性診断薬・治療薬や、独自の作用メカニズムを持った治療薬の開発を行う。
すでに開発したリポソーム製剤技術(有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子(リポソーム)の中に薬物を内包する製剤技術)やマイクロニードルアレイ(100~2000ミクロンの長さの微細な突起をシート上に配した薬剤送達部材。皮膚表面に貼ることで突起部分から薬剤を皮膚に浸透させ、体内に届ける)を、既存薬のみならず核酸医薬品や遺伝子治療薬への応用展開もしていく。